あれから数ヶ月が経ち、私は新たに始めたバイト先から自宅のあるマンションへと帰っている途中だった。
真っ赤な夕日が目に痛い、ようやく涼しくなってきた季節。私はなんの変化もなく、時々家康や長曾我部と遊んで過ごしている。蛇足だが新しいバイト先は長曾我部の紹介で入ったとこだったりする。

コンビニ寄ってから帰るかと考えつつ、時間を確認しようと携帯を取り出す。と、メールが一件入っていた。
家康だろうかと思いながらそれを開く、と、予想外にもそれは刑部からだった。……あいつ私のアドレスちゃんと登録してたのかとなんとなく考えてしまう。連絡先の交換をしたのなんて、もう数年前の話だ。

「……、は?」

さて内容は、と文面に目を向けたところ、出た言葉がそれだった。
何でと思案しても、書かれてないのだから理由がわかるはずもない。そこには確かに、「今日の六時、ぬしの家へ行く」と書かれていた。六時ってあと十分も無いのだけど。

わけもわからぬままとにかく急ごうと歩を進める。刑部の事だ、六時と言うからには六時ぴったりにつくだろう。
早足でマンションまで向かう。額にほんのり汗がにじむ。
なんとか六時一分前にマンション前に辿り着き、荒い息を整えていたら、背後から二つの影が私へと伸びていた。

ゆっくり、振り返る。

一人は車椅子に乗り、もう一人は車椅子を押している。背が低い……子供なのか、後ろの子は姿がよく見えない。
夕日に目を細めながらも、車椅子に座っているのが刑部だということはすぐにわかった。

「刑部、どうしたのいきなり」
「いやなに、久しいな佐羽よ。ぬしに見せねばならぬモノがあったのでな」

疑問符を浮かべていれば、刑部の背後にいた子供が恐る恐る姿を現す。
銀色の髪の毛が夕日に照らされて、きらきらとしていた。真っ赤に輝く髪の毛と同様に顔まで赤く染まっているのは、どういうことだろうか。

「驚いたであろ?」
「……ええ、そりゃもう」

ヒヒヒッと刑部が笑うと同時に、子供は刑部の後ろへと隠れてしまっていた。
どうやら前世の記憶はまだ引き継いでいないらしい。思わず漏れてしまった笑みに、「相も変わらず悪い顔よなァ」と刑部が苦笑混じりの溜息をついた。失礼な。

刑部と子供のそばへと歩み寄り、しゃがむ。おどおどとこちらを盗み見る子供ににっこりと笑顔を向けて、手を差し伸べた。


「初めまして、私は三芳佐羽。君は?」
「……みつなり。石田、三成だ」


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