「これからどうする?」

先輩に訊かれて、少し考え込む。
今あたし達は空港へ向かう列車の中で、あたしと先輩の二人だけが車両と車両の間のスペースに出て話をしていた。
さすがに、クラピカの前で旅団の話はできないし。

「クロロは早く帰ってこい、って。ひっきりなしに連絡来てますよ」
「だよなー、俺もフィンクスからしょっちゅういつ帰ってくるんだってメール入るよ」
「そ、そうですか……」

本当にフィンクスと先輩の関係はいったい何なんだ。変な方向に思わず勘ぐってしまうんだけど。
いや、うん、何も考えないようにしよう…未知の領域には触れたくない。

「ゴン達はこれからどうすんだっけ?」
「レオリオは故郷に帰ります。クラピカは……ちょっと不確定なんですけど、多分ハンターとしての仕事を探すんじゃないでしょうか。ゴンとキルアは、天空闘技場に」
「ああ、そこで念を覚えるんだっけ?」

こくりと頷き、思考はクラピカの事へ移る。

あたしがクルタ族の事に手を出したから、今のクラピカは原作より旅団に恨みを抱いてはいない。
けれど、まったく恨んでないとは限らなくて、もしかしたら今のクラピカも、原作と同じように旅団を探しているかもしれなかった。
仲間の目を奪われたのは、事実なのだから。
ヒソカが最終試験の時、クラピカに何を話したのかはわからないけど…もしかしたらという可能性もある。
ヨークシン編が、回避できないという可能性。

「――…ミズキ!」
「うわっ、はい!すみません」
「ぼーっとして、また何か考えこんでんのか?」
「……少し、だけ」

先輩の表情に、俯き気味に答える。
そんなあたしを見て先輩は小さな溜息をつくと、ぐしゃぐしゃとあたしの髪をなで回した。

「それは、俺が力になれないような事?」
「……まだ、あたしにもどうなるかわからないことなんで…、ごめんなさい」
「いーよ、謝るなって。でも、話せるなら話して欲しい」

俺とミズキの仲だろ?なんて、いたずらっぽく先輩が笑う。
あたしもちょっと笑って、頷いて、でも今は本当にどうなるかわからないから、確信が持てたら話を聞いてくださいとだけ告げた。
先輩としてはきっと、その確信が持てない状態での不安も言ってほしいって、そう思ってくれているのかもしれないけど。

あたしはこれ以上、この人に負担をかけたくない。

「……なあミズキ、天空闘技場って、どんくらいかかるんだ?」
「、え?あー……どうでしょう。少なくとも数ヶ月はいたと思いますけど…」
「うん……じゃあ1ヶ月くらいなら帰るの遅くなっても、問題無いと思わね?」
「……タカト先輩、まさか」

ニッ、と先輩が笑った。

「俺達も行こうぜ、天空闘技場!」

……まじすか、とは、声にならなかった。

金稼ぎのためと先輩は言うけれど、もしかしたらあたしが息抜き出来るように、なんて考えてくれるのかもしれない。
あの一瞬見えたほんの少し悲しそうな表情に、自分の期待もあるけれど…そう思ってしまう。
先輩は、優しい人だから。

でも、天空闘技場に行くことが果たして息抜きになるだろうか。
ぶっちゃけゴンともまだ妙な気まずさがあるし、あそこヒソカいるし。
ああでもお金を稼ぎたいのは事実、か……。あって損はないし、クロロにも借りが残ったまんまだもんなあ。そろそろ自立したい。
それに、ずっと前から考えてた事を実現させるには、やっぱりお金はあった方がいい。
確かゴンとキルアも億単位でお金は稼いでいたはずだし……。

「んんん……、わかりました。行きましょう、天空闘技場」
「よし、決まり!」

ていうかまあ先輩の笑顔に逆らえるわけがまず無いですよねー!




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