ゾル家に来てから一週間くらいだろうか。まだキルアには会えていない。
ゾルディック邸をぼんやりと探索しながら、イルミの言う「全部」とは何なんだろうと考える。

シルバさんとキキョウさんに挨拶もした。
ゼノさんやマハさんともお話した。
カルトの修行にも付き合ったし、イルミとのんびり過ごしもした。後者は不本意だけど。
まさかアルカに会うなんて展開は無いだろうし、ううん…後なにかすることあるのかな。わからん。

というか一週間も経つとさすがに暇だなあと、小さく伸びをする。
その時、不意になにかのメロディーが聞こえてきた。聞き覚えがあるような、ないような。
何だろうと思いそのメロディーの方へと歩いていく。
暫くして音の漏れている部屋に辿り着けば、ちょっとだけドアが開いていた。悪いとは思いつつ、そっとのぞき込む。ポテトチップスのようなにおいがした。

「何してんだよ」
「うひぃっ」

背後からの声にびくりとして、叫び声をあげる。あたしの声に背後の誰かもびっくりしたのか、「な、なんだよ」と慌てたような声が続いて聞こえた。そこで合点がいく。

「ここ、ミルキくんの部屋だったんだ」

気を抜いていたからか、気配に気付けなかった。
部屋から漏れ出ていた音はゲームのBGMだったらしい。
背後にいたミルキはどこか困ったように頭をかいて、「そうだけど」と呟く。見方によれば迷惑そうにも見える表情だった。

「イル兄の嫁が何の用?」
「嫁じゃないから。いやなんか聞いたことあるような曲きこえるから、何かなあと思って」

部屋に入っていくミルキに、なんとなくついて部屋に入りながら返事をする。今すごい「何でついてくんのこいつ」みたいな顔した。あたしは見逃さなかった。
これなんのゲーム?との問いかけに、ミルキはめんどくさそうに、しかし割と詳しくゲームタイトルと内容を教えてくれた。
それは昔、弟と一緒になってやり込んでいた格ゲーで。こっちの世界にもあるんだなあと懐かしくなった。ところどころ差異はあるけど。

「ね、一緒にやっていい?」
「はあ?お前、ゲームなんか出来るのかよ」
「そこそこ強いよ」

ミルキには負けると思うけど。心の中で呟く。

あたしの返事にさして興味はなさそうに、だけどミルキはコントローラーを渡してくれた。


――…


2時間後。


「ミズキお前、何でそのコンボ知ってんだよ!」
「弟とやり込んだからねー、はいあたしの勝ち!」
「っあークソ!!もう一回やるぞ!」
「3連勝した方が何でも言うこと聞く約束忘れないでよ?ミルキ。あたし今リーチだし」
「俺もさっきリーチまでいったっつの」

あたしとミルキは、なんか仲良くなってた。

それから1時間経っても結局勝敗はつかず、勝っては負けて負けては勝ってを繰り返しながら、そろそろ疲れたし休憩、とあたし達はコントローラーをおいた。
「お前、なかなかやるな」とポテチの袋を投げ渡される。きょとんとしつつもそれを受け取り、「ありがと、そっちこそ」と返した。

「うちでゲームするの俺とキルくらいだからなあ、久々にやって楽しかった」
「ふうん、兄弟仲いいんだ」
「は?ないない、あいつ俺のこと刺して家出て行ったんだぞ?」
「でも、一緒にゲームはやる仲だったんでしょ」

仲良しゾルディック兄弟いいなあ。ここに来て初めてゾル家こわい感が薄れた気がする。
あたしの言葉にミルキは不服そうにしてたけど。
ちょっとあっちこっちおかしいだけで一応仲は悪くないんだよなあ、多分。まあそこは暗殺一家なのだし、一般的な考えじゃ理解できないとこもあるか。

ポテチの袋をあけて、1枚かじる。サワークリームオニオン味おいしい。

「ミズキって何でイル兄の嫁になんの嫌なんだ?」
「何を突然…。嫌っていうかなんていうか…あたしイルミのこと恋愛対象として見てないし」
「もったいねー…うちに来たら三食食い放題遊び放題なのに」

それは魅力的かも、と考えて笑う。それでもやっぱり無い。
あたしが好きなのは先輩だし。

「そしたら俺もミズキとゲームいっぱい出来るのにな」
「ゲームくらいは嫁になんなくてもいつでも付き合うよ」

なにはともあれ、ミルキとは楽しくやれそうである。






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