「それがどうしてこうなるのか」

「ミズキちゃんはやっぱり着物がよく似合うわ!」
「はあ、ありがとうございます…」

一休みした後、イルミに連れていかれた先でキキョウさんに着付けられました。どういうこと。
深緑の綺麗な着物で、まあそれはいいんだけど、ていうかこれ絶対高いよね?やだこわい。髪を留めていたシュシュもなんか綺麗な髪飾りに変えられた。これも高いんだろうなあ…ひい…。

「イルミもそう思うわよね」

キキョウさんが、目の前に立つイルミにふる。
遠くを見ていたあたしも視線をイルミに向ければ、ふっとその目を逸らされた。うわ顔赤い。こわい。またキラキラ病か。

「うん、まあ、いいんじゃない」
「そりゃどーも…」

さてそれじゃあ行くかといったノリで、キキョウさんに手を引かれるまま部屋を出る。

どうやら晩ご飯の時間らしい。
もうそんな時間なのかと腹具合を確認してみれば、確かにお腹はすいていた。最後に食べたのゾル家行きのバス乗る前だもんなあ。
ゾルディック家のディナーともなればすこぶる豪華なんだろうな、楽し、み……ん?

ちょ、ちょちょちょちょっと待て、ゾル家のご飯?え?あたしが食べんの?無理じゃね!?
だってゾル家のご飯は毒入りご飯ってハンタークラスタなら周知の事実じゃないですか!やだ!こわ!帰るわあたし…。ああでも帰れない…。

「ミズキってなにか食べられない物とかある?」
「毒ですかね」
「特にないなら良かった」
「あれっ会話が出来てない」

いやいや待ってよイルミさんさすがのあたしも毒なんか食べた日にはあの世でおやすみしちゃいますよ?嫁にするとか言ってる相手死んじゃいますよ?
あっむしろ毒くらい耐えてくんないとうちの嫁には出来ないとかそういう!?そういうアレ!?

いっや…これまじでどうしよう。

「あの、すみませんあたしちょっとお手洗いに…」

一言つげ、案内されたトイレに入って考える。時間はあんまり無い、急がなきゃ。ていうかトイレ豪華だな。

毒を消すとしたら、いや無効化させるとしたら?
土行か水行がそこら辺だろうか。どちらかというと、個人的なイメージとしては水行。命の泉だから、それっぽそう。
自分の念なんだし、自分のイメージでいいだろう。
火行が木行、…なら。相性が矛盾しているのだから、水行の力をもつのは木行か。

ぼんやりと、イメージする。毒を消す木。あたしの体に害のある物を、無効化する物。
練られたオーラは、花の種のような形になって、あたしの掌の上に落ちた。

「……なんかちょっと、やだなあ」

数秒の逡巡、そしてその種を口に放り込み、ごくりと飲み込む。
体の中でそれが発芽する感覚。顔を顰めて、でもまあこれで毒で死ぬことは免れただろうと、息をついた。
ぶっつけ本番ってのが本当に嫌なんだけど。なんとかなることを祈ろう…。

「お待たせしました」

トイレから出て、再びイルミとキキョウさんと、3人で広い廊下を歩く。
体の中の異物感に慣れるのは、時間がかかりそうだ。


――…


「まさかとは思ったけど、本当に毒が効かないなんてね」
「ミズキちゃんはやっぱり素晴らしいわ!」
「後は孫を楽しみにしておくだけだな」

やっぱ毒効くようにしとけば良かった。
ディナーには、致死量とはいかないまでも毒が入っていたらしい。それを「うわあ高そう美味しい肉やわらかい」とか思いながらぺろりといただいてしまったあたしの、ゾル家内好感度はもはやマックスに達した、ようで。つら。

「孫とかほんと勘弁してください…」

なんかこのままなし崩しに嫁にされそうで怖い。先輩に会いたい。






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