「ミズキ起きたのかー!俺もうめっちゃ心配したんだぞー!」
「ちょっ先輩酒くさっ!酔ってますよね完全に!?」

おりゃーって変なかけ声と共にあたしに抱きついてくる先輩。なにこれ美味しい。
いやもう普通だったらテンションだだ上がりなんだけど、てか普通にテンション上がってるけど、それ以上に状況説明が欲しすぎて先輩のテンションを気にしてられない。
どゆことなのこの状況。

「この人らすっげえ面白いのなー?なんか盗賊団らしいんだけどさー、すげえ強いんだってー!」
「わか、わかりましたから、タカト先輩ちょっと寝ててください…」
「っんでだよー俺お前が無事ですげえ安心してんだぞー!」
「言葉のキャッチボール…!」

酔っぱらいと化した先輩じゃ話にならない。
そしてあたしの心臓ももたない。いつまであたしにもたれ掛かってるんですかこの人あたしを殺すつもりなのか。

困り果てているあたしを見かねたのか、先輩に対してとはうって変わってわずかに警戒していたフィンクスが、先輩を抱えてってくれた。
これで、やっと落ち着ける…!
ドキドキバクバクいっていた心臓を深呼吸で落ち着かせながら、警戒心むき出しの旅団員さん達を見上げた。

さっきまでの盛り上がりようが嘘みたい。

トンットン、と瓦礫の山から飛び降りてきたシャルがあたしの前に立つ。
めっちゃ警戒されてる。こええ。
思わずあたしも少し警戒してしまった。
だってなんかされたくないし。アンテナとかアンテナとかアンテナとかね、怖いもんね。

「もう怪我は平気?」
「あ、はい…その件は本当、ありがとうございました」
「まあ治したのはシズクだけどね」

そのシズクも今はここにいない。
どこ行ったんだろう。

今この場にいるのは、フィンクス、ウボォー、シャル、コルトピの4人。
空き缶の山の中に女性が飲みそうなカクテル系もあるから、女性陣も1人くらいいそうなんだけど…どうなんだろ。

「で、もうすぐ団長がここに戻ってくるんだけど」
「、」
「携帯で話したらさ、君のこと知らないって言ってたんだよね?タカトに名前聞いてからも確認したけど知らないって。君、何者?俺らに何の用?」

こええ帰りてえ!なんなんこの威圧感!笑顔が怖いよシャルさん!
何者って言われてもトリップ特典で体力の上がった一般的な女子高生だし、何の用ってただたんに怪我を治して欲しかっただけですよ!
それ以上でも以下でもないです…。

でもこういう展開になるだろうことも分かってて、シャルやクロロの名前呼んだんだしな…。
こうなったら一か八か…。

「目的は私の怪我を治して欲しかっただけ、です。それは本当」
「じゃあ、君は何?何で俺や団長の名前を知ってたの」
「それは…」

念能力か特殊能力か悩むなー、中二臭いけどまあ別にいいよねそういう世界なんだし。
でも試してみた感じ念はまだ使えないっぽいし、特殊能力って設定でいこう。

「その人の顔と声を見ることで、その人の名前とか記憶を知ることが出来る能力が、あるんです」
「?それは…念能力?」
「いや、念は使えないんですけど…生まれつきの能力っていうか、」

さすがに苦しいかな。
シャルは頭いいからわかっちゃうかもなあ。

「その能力で、あなた…シャルさんの知るシズクさん、って人が毒を吸い取るチカラを持っていることを知って、その上でどういう発言をしたら助けてもらえるか考えたんです」
「結果、団長の名前を出すことにした…と?」
「…いい、選択だったでしょ?」

事実、助けてもらえましたし。
にっこり笑ってみれば、シャルもなんともいえない笑みで返してくれた。
とりあえず、自分の怪我を治す以外になんの目的もないことは分かってくれたらしい。

「で、そいつが俺の名前を呼んだ、異世界からの訪問者ってわけか」
「団長!」
「…はい?」

え、今異世界からって、てゆか団長とシズクとパクが3人で帰ってきたよおかえりなさい!じゃなくて!

何で異世界からきたこと知ってんの…。


呆然とするあたしの視界に、むにゃむにゃと酔いつぶれている先輩の姿が映った。





×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -