やっとこさ解放され、イルミに連れてこられたのは綺麗な一室。
わけがわからず「うん?」と首を傾げるあたしを、完全にバカにしてる目線で見やるイルミは一発殴っても許されると思うんだがいかがでしょうか。

「部屋。当分ここにいるんでしょ」
「ああ!なるほど」
「…いつまでいられるの?」

ずっといてもいいんだけど、と続けられ、それは無理だと笑う。

2、3週間…ゴン達が来るまでかな、と答えた。厳密に言えば、ゴン達はここには来ないのだが。
ふうんと鼻を鳴らして、イルミがあたしの髪に触れた。

「髪留め、ぼろぼろだね」
「ん?うん、まあこれしか持ってなかったし」
「見たこと無い形。取っていい?」
「どーぞ」

無いことはないだろうと思っているけれど、確かにこの世界でシュシュを見たことはないなあ。もしかしてほんとに無いのかな。
髪紐とか、リボンとかなら見るんだけど。でもシュシュって楽なんだよね。

「変わってるね」
「そうかな、意外と便利だよ」

簡単につけれて、それだけでちょっとおしゃれに見える、ような気がするし。

あたしの返事には興味なさげに、またあたしの髪にシュシュをつけ直すイルミ。
なんか男に髪いじられんの慣れないなあと、目を閉じてイルミの手が止まるのを待っていた。
そうしたら。

「ひぃぇっ!?」

かぷりと、耳を噛まれた。

「……もっと色気のある声、出せないの」
「いきなり噛まれたらびびるだけに決まってんでしょ!」

顔を上げて睨み付ければ、不満げな顔に見下ろされる。
呆れながら「何で噛むの」と問いかけると、「無防備だったから」なんて言われた。こいつまじ殴ってやろうか。

数秒の間を開けて、イルミは唐突にぽん!と掌に拳を当てた。

「キスの方が良かった?」
「イルミ、ヒソカと同レベル」
「げ…やめてよ」

嫌っそうな顔するくらいならこんなことすんなよちくしょうと出てきそうになる涙をおさえる。あたしは後何回ゾル家やだもうほんとこわいって思えばいいんだ。

「あっそうだ」

不意に、思い出す。
そうだよあたしはこんなのんびりイルミと過ごすためにゾル家に来た訳じゃないのだよ。

「キルアに会わせて」
「やだ」
「返事はえーよこんにゃろう」

一拍あけて。

「全部終わったらね、って。言ったでしょ」

そっと、口角を上げて、イルミは答えた。
目が笑ってないんですけど。ていうかイルミが口元だけでも笑ってるっていうのがなんかもう怖すぎて怖い。帰りたい。






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -