そして十数分で辿り着いたゾルディック家のお屋敷。でかい。
こっち、とカルトに手を引かれ、中に入る。
暫く石畳、と言えばいいのか、そんな道を通っていれば、大きな扉の前にイルミが立っていた。心なしか怒っているように見えるのは気のせいだと思いたい。

「遅い」
「ええ…ごめん」

開口一番がそれかい。もうちょっとさあ、こう、「来てくれてありがとう」とか「わざわざごめんね」とか……いやそんなこと言うイルミはきもいな。
自分の想像になんとも言えない気分になっていれば、イルミは「もう戻っていいよ」と、カルトとあたしの手を離させた。
少なからずむっとしているらしいけど、大人しく離れたカルト。

「また会える?」
「うん、その時はもうちょっとゆっくり、お話しよう」
「…うん!」

カルトかわいい。さっきはもうやだって思ったけどやっぱりカルトは可愛いわ。お人形さんみたいだし。癒しだなあ。

手を振りながら去っていったカルトを見送り、イルミに向き直る。

「ん、で。あたしは何かしなきゃいけないの?」

問いかければ、こくりと頷かれた。
そして扉の向こうを指さす。円は使ってないけど、オーラでなんとなくわかる。
この向こうにいるのは、シルバさんとキキョウさんだろう。ゼノさんやマハさんは、いないらしい。
アルカちゃんの部屋はどこら辺なんだろうなあとぼんやり考えていたら、イルミが大きな扉をゆっくりと開けた。えええちょっと待ってまだ心の準備してないんですけど。

「……は、はじめまして」

大きなソファーに座っているシルバさん、その傍らに立つキキョウさん。
うわあ本物だ、とか、そういうのを考える以前に、ちょっとだけ怖かった。オーラはんぱない。さすが2対1とはいえクロロと渡り合うだけあるわ…。

恐る恐る声を出したあたしを、しかし2人はとても温かい笑みで迎えてくれた。
「あなたがイルミの言ってたお嫁さんね!」「確かに、相当強そうだな」と。うんちょっと待って、勘弁してください。

「イルミ…」
「だって、そういうことでしょ?」

どういうことだよ。

え、なに、あたし彼氏の両親に挨拶に来た感じなの?そういう風にとられてんの?ていうかキキョウさん近い近い近いなんでこんな初対面で猫可愛がりされてんのあたしゾル家やだもうホント怖い!
キキョウさんによる熱烈ハグと高速撫で撫でを享受しているあたしの顔は死んでいることをここに記しておく。
ゾル家やだもうほんとこわい。何度でも言う。

「母さん、ミズキ死にそうだから」
「あらあらまあまあ!ごめんなさいミズキさん!」
「いえ…大丈夫です」

髪の毛ぼっさぼさになったけどな…。
いったん髪をほどいて、手ぐしで整え結び直す。このシュシュもだいぶぼろっちくなってきたなあ、新しいの今度買おう。

座るように促され、シルバさんのいるソファー正面のイスに腰掛ける。
隣にイルミも座って、あれこれ完全にご挨拶に来ちゃった感じじゃね?と遠い目になった。どうしてこうなった。

「あー…あの、少々誤解があるようなんですが、」

あたしを置き去りに、結婚式がどうの結婚後はどうするのかだのを話し始めてしまった3人…主にキキョウさん。
やめろくださいとは言えず、おずおずと手を挙げて口を挟んだ。

「あたし、イルミと結婚する気はないです」
「まあ!?」
「…そうなのか?」
「はい…すみません。まず付き合ってすら無いですし」

肘で軽くイルミをどつく。なに拗ねた顔してんだお前。

「家まで連れてきたら勝ちだと思ったのに」
「そこまで流されやすくねーから!」

どうにかこうにか、あたしに結婚やらなんやらの意志が無いことをシルバさん達はわかってくれたらしい。が。

「だけど私、ミズキさんみたいな女の子の子供欲しかったのよ!」
「ここをお前の家だと思って、いつでも遊びにきてくれ。俺の事はお父さんと呼んでもいいんだぞ」
「あらじゃあ私の事はお母様と呼んでちょうだい!」
「もうやだゾル家ほんとこわい!」

この夫婦にも好かれてしまったらしい。
なんなのほんとあたしゾル家専用の愛されフェロモンでも出てるの?なんか泣きたくなってきた。コルトピに癒されたい。

「イルミのお嫁さんもいいけれど、年齢的にはキルかミルキでも」
「いっそ養女にするのも手だな」

影でこそこそ話してる2人が怖すぎる。






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