試験は全て終了。不合格者はキルア。
第287期ハンター試験は、合格者、ゴン、クラピカ、レオリオ、あたし、タカト先輩、ヒソカ、ギタラクル、ハンゾー、ポックル、ボドロさんの10人で幕を閉じた。

といってもまだ説明会があるんですけどね。


キルアのことでイルミに詰め寄ってきたゴンを、あたしは離れた席から見ていた。
クラピカ達が座っている列の一番後ろ。先輩はレオリオの一つあけた隣の席に座っている。

はっきりと詳しくは覚えていないけれど、ゴンの発言は原作とほぼ変わらなかったと思う。
イルミを許さないと。もう、キルアには会わせないと。
イルミの腕を、それが折れてしまうほどに力強く握って。
そんなゴンに対してイルミは顔色ひとつ変えずに、悪意のこもったオーラをほんの少しだけ当てようとしてたけど。
ゴンが避けたことでそれはすぐにやめてくれたから、放置。

「…、」

ちらりと、一瞬ゴンがあたしを見た気がした。

あたしがしたことについて、ゴンがサトツさんからどう聞いたのかは知らない。
もしかしたらゴンには、あたしもキルアの敵のように思えたのかもしれない。

その視線には、4次試験の時のような優しさや温もりは、込められてないように思えた。


けれどゴンが何かを言う前にネテロさんが話を始め、そしてマーメンさんが続く。

「――ここにいる10名を、新しくハンターとして認定します!」

ゴンの真意を知ることは出来ないまま、説明会は終わった。

ゴンの元にレオリオとクラピカ、そして先輩が集まってくのをぼんやりと眺めてから、あたしも階段をゆっくりと下りる。

「ギタラクル、キルアの行った場所を教えてもらう」
「…やめた方がいいと思うよ」
「誰がやめるもんか」

ちょっと離れた場所からでも聞こえてくる、ゴンの強い意志。
本当にまっすぐで、危うい子だと思う。

「キルアは俺の友達だ!絶対に連れ戻す!」

後ろの3人も?との言葉に、先輩達は当然だと返す。
あたしは会話には混ざらず、一歩離れた場所で状況を眺めていた。
ちらっとこっちを見たイルミは、そして、いいだろうと頷いた。

「キルは自宅に戻っているはずだ。ククルーマウンテン、この頂上に、俺たち一族の棲み家がある」
「ククルーマウンテン…」
「ミズキなら場所、わかるんじゃない?」

唐突に名前を出されて、びっくりした。
そこで初めてゴン達はあたしに気付いたようで、ぱっとこっちに顔を向ける。反射的に逸らして、なにやってんだあたしとゆっくり瞬きをして。

「うん、まあわかるけど」
「なら教えてあげれば?友達、なんでしょ。そいつらとは」

なんなんですかその言い方。

一瞬目を丸くして、けどあたしが何かを言い出す前にイルミは部屋を出て行ってしまった。
追いかけようとしたあたしを止めたのは、ゴンの声。

「ミズキは、」
「…なに?」
「あいつと、どういう関係なの?」

黙り込む。
友達だと、答えようとした。でもイルミはあたしを友達だとは思っていない。
かと言ってイルミに片想いされてるよだなんて答えらんないし。

ゴンは悩むあたしを不思議そうに見る。
どう答えればいいのかわからなくて、曖昧な笑みを浮かべた。

「あたしも…わかんない。でも、大切な人なんだ」
「それは、キルアより?」
「……ゴンは、あたしがキルアの敵のように、見える?」

わかんない、とゴンは正直に答えてくれた。

「サトツさんからギタラクルとキルアの話を聞いたとき、あいつを止めたのがミズキだって知って、嬉しかった。でも、キルアを帰らせたのもミズキだって聞いたら、わかんなくなった」

先輩とクラピカが何かを言おうとしてくれたのを制して、ぽんぽんとゴンの頭を撫でる。

あの時はそうするのがベストだと思った。
原作通りの展開にするために。
ゴン達がゾルディックに行くのは必要な出来事だから。そうするためには、あそこでキルアには帰ってもらわないといけなかった。
キルアには悪いけど。全部、あたしの都合だけど。

「ゴンの好きなように考えていいよ。あたしはキルアも、ギタラクルも、もちろんゴン達だって、大切だと思ってるだけだから」

じゃあまた後でね、とイルミが出て行ったドアを抜け、彼の姿を探す。
見つけたイルミはヒソカと話している真っ最中で、声をかければ2人は同時にあたしの方を振り向いた。
どうやらヒソカさんが恍惚なうな感じみたいなんで、話は終わったとこらしい。その顔気持ち悪い。

「やあミズキ、どうしたんだい?」
「悪いけど今ヒソカに用はないから。イルミ、手、貸して」
「…手?」
「折れてるんでしょ?4次試験の時のお礼、治させて」

イルミはきょとんとしたけれどすぐに手を差し出した。
その手を両手で包み、炎で治癒させる。
多分治ったんじゃね?ってくらいのところで炎を消し、痛くない?と問いかければイルミは小さく頷く。

「…ところでミズキ、ボクにお礼は?」
「ねえよ」
「ヒドイなあ」

というかヒソカにはいろいろ前払いしてる気がする。不本意だけども。だからお礼とかさー!いらなくねー!?みたいな。うん。

「で、イルミ。あたしはゴン達とあんたの家行くけど…それでいいの」
「来てくれるなら何でもいいよ。俺と一緒に帰ってくれた方が楽だけど」
「先輩とゴン達も一緒に連れてってくれるなら考える」
「それはヤだ」

ですよねー。

小さく笑って、じゃあついたら連絡するからと2人に背を向けた。
数歩進んで、はたと気付きもう一度振り返る。

「ヒソカ、みんなからの連絡、ちゃんととりなよ」
「なんだい、いきなり」
「言ってみただけ。きっともうちょっとしたらマチ辺りから連絡入ると思うから」

じゃねと今度こそ背を向けて、ゴン達の元へ向かった。


ハンター試験は終わり。

ゾルディックで少しの時間を過ごしたら、旅団のみんなのとこに帰ろう。
早く会いたい、みんな元気かな。まあ元気だろうけど。
そう考えるくらいには、あたしホームシックになってんのかなあと思うとなんだか微妙な気分になるけれど。


シャルとフェイタンに「試験終わった。あたしと先輩、合格したよ」とメールを入れて。
パソコンルームにいたゴン達と合流した。






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