「最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。その組み合わせは、こうじゃ」

ネテロさんが布を引き、現れたトーナメント表に私は頭を抱えた。
あのじじいまじでやってきやがった。どうしてくれようこの人。まじで今すぐ帰りたい。

私は右側のブロック、ボドロさんの右隣に番号が振ってあった。そしてそのすぐ隣に、先輩。

第2試合で、私とタカト先輩は、戦わなきゃいけない。
そういう、表になっていた。
うわしかもこれ負けたら次ヒソカじゃねーか…。

私がこれはとんずらこいてもいいだろうかと真剣に考えている内にある程度の説明は終わったらしい。
少し離れた位置に立つ先輩へと目を向ければ、何を考えているのかよくわからない表情を浮かべている先輩と目があった。
にこりと微笑まれる。うわ、今鳥肌たった。やばい先輩がこわい。

「戦い方は単純明快。武器OK反則無し、相手にまいったと言わせれば勝ち!ただし、相手を死に至らしめてしまった者は即失格!その時点で残りの者が合格。試験は終了じゃ」

説明終了。
私はぱっと先輩から目をそらし、これから始まるハンゾー対ゴンの試合に集中することにした。
…とは言ってもやることとか、無いんだけど。


++++


展開は、原作通りだった。
ハンゾーの一方的な攻撃。見ているこっちが痛くなるくらいっていうか痛い痛いまじで痛いやめて。


私はまだ、こうなることを知っていたから、心の準備が出来ていた。
でもそんなこと知る訳のない、レオリオ、クラピカ。そして…先輩。
腕を折られたゴンを見て、3人は激昂していた。中でも分かりやすいのはレオリオだけれど、私はわかる。

先輩、すっげえ怒ってる。
だってオーラやばいものあの人のあんなオーラ見たことないよっていうか見たくなかったよっていうか!こわ!
ヒソカがすごく楽しそうに先輩見てんのがなんとも言えない。

先輩のオーラのせいもあってか、ずどんと空気が重くなる試験会場。
その中でも余裕そうに話を続けるハンゾーには感服ものだけど、私個人としては空気読めと言いたい。いやまじで。

「ミズキは怒らないのかい?」
「ヒソカ…怒るって、何で?」

不意に、いつの間に私のそばまできていたのか、ヒソカに話しかけられた。
怒らないのかっていうのはゴンの現状に対して、だろう。
そりゃ私も原作知らなかったら怒ってたかもしれないけど。というかただ単に怒るとか以前に痛そう過ぎてだな。

私の返答がそれはそれは意外だったらしく。
ヒソカはきょとんと目を丸くして私を見下ろした。その顔はなかなかかわいい、が、きもい。

「だってゴンは、やられっぱなしの子じゃないし」

ね、と言いながらゴンのいる方向を指さす。
ちょうどゴンが逆立ちしているハンゾーを蹴り飛ばした瞬間で、笑みを深めた私にヒソカがくっくと肩を揺らした。

「ミズキはまるで、こうなることを知っていたみたいだねえ」
「さあ、どうだろうね」

それからはゴンの独壇場。
最終的にゴンは吹っ飛ばされて気絶してしまったけれど、まいったと言ったのはハンゾーだった。
別室へと連れて行かれるゴンについて行きたかったけれど、それは敵わず。


「それでは第2試合、ミズキ対タカト!」

ぞくりと体が震えた。
私が、先輩と、戦う。
そんなの無理だ。絶対に、出来ない。

だけど先輩は既に、中央へと向かっていて。その足取りは、しっかりとしていて。
もう、決めてるんだ。
私と戦うことを。


やだな、泣きそうになってきた。

ここでもし戦うのを拒否したり、始まってすぐまいったなんて言ったら、嫌われるかな。嫌われるだろうな。
あの人の決意を、無かったことにするんだから。
そう思っても私は動くことが出来ない。
審判の人に名前を呼ばれる。聞こえてるよ、聞こえてます聞こえてるんです。

でも、体が、動かなくて。

ぎゅうと強く、両手を握りしめる。
先輩と戦う覚悟なんて、出来るわけが。

「…っわ、!?」

と、不意に。
ポンッと背中を押され、私は2、3歩、前へと進んでしまった。
後ろを振り向けば、さっきまで私の横で楽しそうにゴンの観戦をしていたヒソカが、私に向かってひらひらと手を振っている。
押したのお前かちくしょう。

「ほら、試合だよ。いってらっしゃい、ミズキ」
「…、…――」

口を開いて、いったん閉じて。
言おうとした言葉を、飲み込んだ。

「…いってきます、ヒソカ」

ありがとうなんて、言わないからなばかやろう。






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