先輩と別れて、とぼとぼと飛行船内を歩く。 さっき面談開始の放送が聞こえたから、その内あたしも呼ばれるだろう。それまでにこの顔なんとかしないと。 とりあえずシャワー借りるか、と道を曲がったところで。 「あ、イ…ギ、タラクル」 カタカタカタ、と震えている男と鉢合わせた。 飛行船内での君とのエンカウント率高くない? 「…?何か用?」 イルミは相変わらずカタカタなうである。一応ちゃんと喋れるんだから、喋って欲しい。 近くにキルアでもいんのかなと思って円をしてみるけれど、近くに人がいる気配もなく。 まあいいわ、と肩をすくめて近くの部屋にイルミをつれて入った。 ちょうどあたしも、確認したいことあったし。 適当な部屋に入ればイルミは普通に話し出した。変装はとかないんだなあと思いつつ、彼の話をきく。 「キルにライセンスはまだ取らせたくないんだよね。どうしたらいいと思う?」 「そういう相談すか…」 だって弟になるんだから、と続けられ思わず遮った。いやだからならねぇって。 「ちょうどいいや、あたしもそのこと聞こうと思ってたの」 「え、以心伝心?」 「ちょっと黙れ」 思わずクロロ並の低音ボイス出たわ。 咳払いをひとつして、改めて口を開く。 「次が最終試験になる。その時にもし何があっても、キルアに危害を加えないって約束して」 「…それは出来ない」 「何で」 「危害は加えないよ、俺の大事な弟だしね。でも、友達を作るのは反対だし、試験に合格するのも今はまだ早い。それに家出したんだし、お仕置きくらいはしなきゃ」 こいつまじ頭かってえ。 …でも、まあ仕方ない、のか。イルミもゾルディックの長男なんだもんなあ。 ため息をつく。イルミの考え方を変えるなんてことは、あたしにも出来ない。 「わかった。ごめん無理言って」 「うん。ミズキが物わかり良くて嬉しいよ」 「でも、もしキルアに何かをさせようとしたら、あたしはそれを止めるからね」 じゃあそれだけだから、どうしたらいいかは自分で決めれば、と投げやりに呟いて部屋を出る。 出ようとして、けれど、あたしは立ち止まった。 「ねえ、ひとつ、聞いていい」 「?なに」 数秒の逡巡。間が開いて、やっぱり聞くのはやめておこうかと思ったけれど、でも他に聞ける人もそんないないし。 いやでもイルミも大概か…。 「いや、やっぱいいや。ごめん。じゃあまた後でね」 部屋を出る。 円をして人気のない方へと向かいながら、あたしは携帯をいじっていた。 話せる人。まともな意見をくれる人。あたしにも先輩にも寄らない、中立の人。 …となると、1人しかいない、よなあ…。 ため息しか出ない。 携帯のディスプレイには、ハゲクロロの文字が浮かんでいた。 ← → 戻 |