他の受験者と鉢合わせることもなく、第4次試験は残り1日となっていた。 それまでは1日のほとんどをゴンと組み手をして過ごしていたから、なんというか、原作よりゴンくん強くなったんじゃねーのって気すらする。大丈夫かなこれ。 そして、今日。 他のみんなはどうなったのかな、とのゴンの言葉に、じゃあスタート地点まで戻ってみようかと提案した。 「みんな大丈夫だろうなって思うんだけどね」 「そうだね」 木と木の間を跳びながら走る。 最終日にゴンと、クラピカとレオリオが合流するのは覚えていたから。 それに、ゴンが誰かの役に立ちたいと思っている事も。 …そういえば先輩は大丈夫だろうか。 いや大丈夫じゃないなんてことはありえないだろうけど、やっぱり少し気になる。 ゴン達のとこについて行っても、あたしに出来ることはないし…いやあるにはあるんだけど、きっとあたしがいたら、ゴンが行く意味が無い。それは駄目だ。 「ゴン、ごめん。あたし先輩が気になるからちょっとそっち行ってみる」 「そっか。そわそわしてるから、タカトが気になるのかなあって思ってたんだ」 じゃあミズキとはここでお別れだね、とゴンは立ち止まって笑う。 そんなに分かりやすかったのかなあ、あたし。恥ずかしい。 「だね、じゃあまた、船で会おうね」 「うん!」 ゴンと別れ、姿が見えなくなった辺りで円をする。 スタート地点に戻ろうとしているクラピカとレオリオのオーラ。そこに向かっていく、ゴンのオーラ。離れた水辺でぼんやりしているキルアのオーラを見つけて、そのすぐそばに先輩がいるのを見つけた。 …って、えぇえ。先輩とキルア一緒にいんの…?びっくりだよ。 と、とりあえず行ってみるか…と地面を蹴る。 ここからは、あたしの足なら5分もかからずにつくだろうけれど、わざとゆっくり走りながら煙草に火をつけた。 深く、一回吸って、吐く。 やっぱり落ち着く。そう思いながら走れば、ふわふわと煙がなびいた。 ++++ 「先輩、キールアー」 数日ぶりでっす、と言いながら木から飛び降りてきたのはミズキで。 置き手紙一枚を残して消えた日以来だ。円で、ゴンといるらしいことはわかっていたけど。 「ミズキ!お前、プレート集まったの?」 「え?おう…タカト先輩から聞いてないの?キルア」 「聞くって何を」 「俺らもさっき会ったとこなんだよ」 苦笑気味に肩をすくめれば、ミズキはなるほどと小さく笑う。 ふと、旅団のみんなといたときに感じた煙草のにおいが、した気がした。 「あたしと先輩は自分のプレート1枚で6点分扱いなんだ。そういう受験者がランダムでいたみたいなんだけど、偶然ね」 「はあ!?んなのずっけーよ!」 「そう言われても…なあ?」 キルアの反応はもっともだ。俺だって自分以外の奴がそうだったら、ずりいと思う。 とは言えさっきはミズキがああ言いはしたけど、俺とミズキはもう合格しちまってんだし。しゃーねえだろ。 「てことはタカトもミズキもこの試験は余裕で合格かー。はーつまんね。お前らもっと焦ったりとか無ぇの?」 「キルアも余裕こいてんじゃねーか」 こいつ確か結構始まってすぐくらいにプレート集め終えたっつってたと思うんだけど。 不意に視線を向ければ、さっきまでは苦笑していたミズキが小さく顔を顰めている。 どうした?と問いかけようとして、けれどそれより先にミズキはぼそりと、呟いた。 「最終試験は、そうも行かないけどね…」 「ミズキ、なんか言った?」 「ん?いや別に。何でもないよ」 俺には聞こえた、その言葉。 やっぱりミズキは試験内容を知っている、んだと思う。というよりかは、これから起こること…未来、を知っているみたいだ。 だけどそれについて、ミズキは俺に話そうとしない。頑なに。 何度も思ってるけどさ、俺はミズキをこの世界でたった一人の同じ人間、同じ世界の奴だと思ってるし。ここで2年過ごした絆みたいなもんも、あると思う。 ただの鈍くさい後輩だったあの時よりは、一緒にいて楽しいと思うし、守ってやりたいとも思う。 それくらいには、俺はミズキを大切に思っている自信がある。誰にも、負けないくらい。 でも、ミズキはそうじゃねーの? だから俺に、何も話さない?信用できないから、ミズキにとって俺はただの先輩でしか無いから。 だとしたら、俺、すっげーやなんだけど。 つーか、なんていうんだこれ。…かなしい? 「…ミズキ」 「え、あ、はい?」 声をかける。同時にミズキの手を握れば、ミズキはおろおろとしながら俺を見上げた。 「この試験終わったら、やっぱちょっと、話そう」 「え、……え?」 間でキルアが俺とミズキを交互に見ながら、告白?告白か?とにやにやしていた。 ← → 戻 |