さすがの回復力というか、次の日の夕方にはゴンはもう元気にそこら辺を走り回っていた。若さが羨ましいよあたし。
ていうかホントに、ゴンの自己治癒力っておかしい。人間の範疇越えてんだろ…。

「ミズキー!ちょっと組み手の相手してくれない?」
「え、おお…あたしで良ければ」

突然のことに動揺しつつ、水辺でぶんぶんと手を振っているゴンの言葉に立ち上がる。
のんびり歩きながら考えた。どれくらい力をセーブしてやればいいんだろう。手加減するのって苦手なんだよなあ。
まあ、適当に流せばいっか。

「ずっと思ってたんだけどさ、ミズキってかなり強いよね」
「んー…まあ、そうだね」

否定すべきだったか、今の。
いやでも強いのは残念なことに事実だし。

「ヒソカとミズキだったらどっちが強い?」

ゴンの拳を受け流し、左足でゴンの横っ腹に蹴りを入れながらふむんと考える素振りをする。
実際のとこ、戦略面や知力で言えばヒソカのが上かもしんないけど、単純な戦闘力で言えばあたしのが上だろう。10回戦って10回とも勝てるかと言われたら、ちょっと微妙だけど。

「多分、あたしかなー」
「へえ…ミズキって、やっぱりすごいんだね!」

ぴょんぴょんと、ゴンはバックステップであたしから離れ、一旦間合いをとった。
追いかけるのも面倒なのであたしはその場にとどまり、ちょいちょいと人差し指だけでゴンを手招く。

にぃっと楽しそうに笑ったゴンは一度しゃがみ込むと、すぐさま地面を蹴り一気にあたしとの間合いを詰めてきた。
さすがというか、ゴンのバネの良さは本当に感服物だな。
その勢いで繰り出してきたパンチを受け流すか受け止めるか、一瞬迷ったけれど、左手でゴンの拳を包むように受け止めることにする。
更に右手をゴンの鳩尾に埋めようと動かしたけれど、それはゴンの手に止められて。

「でも惜しい」
「え?、うわあっ」

すっと膝を曲げ、巴投げのようにゴンをあたしの後ろへと放り投げた。
ゴンはどうにか空中で体勢を直し着地したけれど、勢いに負け地面にしりもちをつく。

「まだやる?」
「もちろん!」
「怪我治ったばっかなのに、元気だね…」

お姉さんちょっと疲れてきたよゴンくん。煙草吸いたい。

「じゃあ後10分経つまでに1発、ゴンがあたしに入れられなかったら終わりね」
「えー!?こんだけやっても全然攻撃当てらんないのに…」
「ま、ヒソカに一発入れるよりかは簡単だと思うけど」
「、…」

途端、黙り込んでしまったゴンに小さく苦笑を漏らす。
1時間ずっと撃ち合いを続けていたけれど、ゴンは未だにあたしに一発も攻撃を当てることが出来てない。あたしがかなり手加減してるにもかかわらず、だ。

元々のチートな強さもあれば、旅団のみんなに修行つけてもらったからっていう理由もある。
多分、蟻編の頃になればさすがにあたしも余裕綽々、とまではいかなくなると思うけど。

「それとも、ここで立ち止まる?ゴン」
「…っやる!」

それでこそゴンだと、パッと上げた強い意志を込めた表情に笑みを浮かべて、構える。

「一発入れらんなかったら晩ご飯取りに行くの、ゴンの役ね」
「じゃあ一発入れられたら、ミズキ、後で一緒に水浴びしようね!」
「あれえゴンらしからぬ発言が聞こえた気がする!?」

いやむしろゴンだからこその天然発言?
お姉さん君のことがよくわかんないよ!

ゴンはへらっと、決まりね!なんて楽しそうに笑って地面を蹴りあたしの目前へと勢いよく迫ってきた。

さすがにゴンとはいえ一緒に水浴びはちょっと…いやゴンならセーフ?いける?弟みたいなもんだしな年齢的にもキャラ的にも…キルアはちょっとアウトだけど。あとクラピカでもいける。コルトピもいける。ならゴンもセーフか…?
うんうん考えていたら眼前に迫っていた拳に一瞬反応が遅れ、うおぅとブリッジの要領でそれを避ける羽目になった。腰痛い。

「あ、夜ならほぼ見えないしセーフか」

地面に両手をついて、蹴り上げた足で頭上のゴンを軽く蹴飛ばす。
ほっ、と体勢をすぐに戻せば、にんっと満面の笑みを浮かべたゴンが今度は蹴りを繰り出してきていた。はっや。

「俺、結構夜目きく方なんだよね」
「あーそっか、ゴンの視力舐めてたわ」

そんな感じで2人して他愛ない会話をしながら、笑いながら、組み手を続ける。
でも残念でしたゴンくん。もうすぐ10分経ちます。水浴びはまたの機会にお預けだね!

「そ、りゃぁっ!」
「、え」

あーこの技、技っていうかなんとうかこの芸当見たことあるわーなんて思いながら必死に身体をひねるも、鼻の頭をゴンのブーツがかすった。地味に痛い。

蹴りだした足の勢いでブーツを脱いで、距離を縮めてきた、と。確かネテロさんとボール取りしてた時にやったんだっけね?そんなんやってくるとは思わなかったわ…油断した。

ピピピ、と設定していた携帯のアラームが鳴る。
鼻の頭をさすりながらアラームを止めていれば、目の前でゴンがにこにこと、天使のような笑顔を浮かべていた。
…ほんとに天使かこの子。

「はー、汗かいたね!ミズキ、水浴びしに行こ!」
「…そうだね…」

うん、なんか計算高い子に見えなくもないけど、気のせいだ。ゴンの笑顔が若干黒く見えるのはあれだ、日が落ちてきたからだ。そうに違いない。
ゴンは天使なんだよお神様そこんとこよろしくお願いします!






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