疲れていたからか、ゆっくりと深い眠りへと落ちていったゴンに毛布をかけ、そっと頭を撫でる。

確かゴンが受けた毒は、筋弛緩系。
ゴンの自己治癒力なら、ちゃんと食べて寝れば明日明後日には体内の毒も浄化されるだろう。

「残り、4日」

ゴンがクラピカ達と落ち合うのは確か試験最終日、だったはず。
あと3日間はフリーだ。
タカト先輩なら心配は無用だろうし、キルアも手を貸す必要は無い。イルミとヒソカには今会いたくない。つーかあの2人は思い出したくもない恥ずか死ぬ。

まあ、この3日間はゴンについていよう。
もし他の受験者にばったり会ったりした時なんかには、あたしがいた方が安全だろうしね。


もう1、2本煙草吸っとくかと思い立ち、立ち上がってゴンから離れようとする。
と、くいっとなにかに服がひっかかったのか、立ち上がることが出来なかった。
まあ地べたに座ってんだしそういうこともあるわなと、何に引っかかったのか確認する。

「…ありゃ」

根っことかに服が引っかかったわけじゃなかったらしい。
あたしの隣で木にもたれて眠っているゴンが、しっかりとあたしのスカートを握りしめていた。
…こりゃ立てねーわ。

煙草を吸うことは諦めて座り直し、ゴンの頭をふとももの辺りに乗っけて横たわらせる。
毛布をかけ直して、木の幹にゆっくりともたれた。

「ほんと、ゴンは可愛いなあ」

つんつんと跳ねた頭を撫で、反対の手で携帯をいじる。

旅団のみんなは元気にしてるかな。
メールはちょくちょく色んな人から入ってくるんだけど、電話をかけてくる人はいない。ちょっと切ない。
あとフィンクスはあたしには何も連絡入れないくせにタカト先輩にはメール送ってるってどういうことなの?あの2人ほんとなんなの?どっちに嫉妬したらいいのかわかんねーよあたし。
いやまあいいんだけどさあ!

ぽつぽつと溜まっていたメールに返信していたら、唐突に携帯が震えた。
着信。…なんだクロロか。シャルからならワンコールで出たのに。
数秒画面と睨めっこしてから、通話ボタンを押した。

「はい?」

起きないとは思うけど、一応ゴンを気遣って小声で話す。
クロロはまさか出るとは思ってなかったのか、一瞬の間をあけてから、「ミズキか」と口を開いた。

「あたしの携帯にあたし以外の人は出んでしょう」
『1回かけたらヒソカが出たぞ』
「いつの話!?」

3次試験か!3次試験の時か!!ヒソカあの野郎んなこといっこも言わなかったぞ…!
あいつまじ次会ったとき全力で一発殴っていいかな…人の携帯にかかってきた電話勝手にとんなよ…。

「うん…それは初耳だけどまあいいわ…。何か用事?」
『いや、用事というわけではないんだが』
「用も無いのに電話すんなよ」
『…その様子なら試験は順調みたいだな。タカトも一緒なのか?』
「今は別行動中」

ほう、と興味深そうにクロロが呟いた。
お前ならタカトから離れなさそうなのにな、って。いやそりゃまああたしも許されるなら先輩とずっと一緒にいたいですけど。
他のみんなも気になりますし。

『まあ元気そうならいいんだが…というかミズキお前何で俺にだけメール返さないんだ、シャルやフェイにはちゃんと返してる癖に』
「ああだから電話してきたのか」

さっき打ったのはフェイタンへのメールの返事だ。フェイタンがそれを受け取ったのを見て、わざわざ電話してきたと。
クロロって暇人なの?

「いや、返すつもりではいたんだよほんと、うん」
『本当か?』
「2割くらい」
『ほとんど嘘じゃないか』

だってクロロのメール本文長いんだもん返すのめんどくせーよ。なんだよ50行越えって。ワード文書1枚より多いわ。
用件は短くまとめてください。

というかまずあたしメールそんなに好きじゃないんで用件は電話でお願いしますっていう。

『とにかく、まあお前に言うことじゃないとは思うが…頑張れよ』
「そりゃどーも」
『あと試験終わったらさっさと帰ってこい』
「あっそれは無理。終わったらゾル家行くことになったから」

ほぼ強制的にな!

『ゾル家…ってゾルディックか!?何でそんなことに…お前本気でイルミに嫁ぐつもりじゃ』
「んなわけねーだろ」
『じゃあ何で、』
「充電やばいから切りますねー」

向こうからシャルの携帯がそうそう簡単に充電切れるわけないだろとかなんとか聞こえてきたけど、問答無用で通話を終了し電源を切る。
とりあえずはまあ、ゾル家も早めに切り上げてみんなのとこに帰るようにしなきゃなあ。

なんだかんだクロロも心配してくれてんだと思うし。
旅団のみんなに早く会いたいのは、事実だし。

「…ん、ミズキ…?誰かと、話してた…?」
「っごめんゴン、起こしちゃった?」

もぞもぞと身体を捩って、うっすらと開いた目でゴンがあたしを見上げる。
疲れてるだろうに、しょうもないことで起こしちゃって本当に申し訳ない…ゴンまじごめん…。

「ううん…ミズキが楽しそうだなあって、思って、」
「…ん?」
「俺…楽しいこと好きだから」

…やだこの子寝ぼけてる!!かわいい!!
もう可愛すぎんだろゴンくんまじ…持って帰りたい…一生をかけて愛でたい…!

だがしかしクロロと話してたのが楽しそうだってのは遺憾の意。

「話してたのは、ミズキの…家族?」

へにゃりと、寝てんのか起きてんのかよくわからない表情で笑ったゴンのおでこを軽く撫でて、ちょっとの間をあけてからあたしも笑みを浮かべた。


「…うん。あたしの、家族だよ」


俺もいつかミズキの家族に会いたいなあって、ゴンはそう呟いて、また眠りに落ちる。
あたしは、それはおすすめ出来ないなあなんて、苦笑するしかなかった。






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