1番最初に目についたのは廃墟だった。
いくつもの崩れかけているビル。
あたしはこの光景をアニメや漫画で見たことあるんだけど、んでもってあの生き物のことからするともしかしたらここがあの世界かもしれないんだけど。
やっぱりまだちょっと、否定したい。

2番目に目についたのは、その廃墟に似つかわしくない綺麗な金色だった。
すごく残念だけど、そこであたしは確信してしまった。
ここが、ハンターの世界だって。

「……」

彼らの身体能力の高さを知っているから口には出さなかったけど、あたしは彼の名前を知っている。
だいぶ離れてるのにくっきりと彼の姿が見えている時点であたしの身体能力も上がってるのかもしれない。
そういえば、あたしと先輩を襲った生き物は、あたし達を追いかける事が出来なかった。
てことは、先輩も…。

「人?あのー!すみませーん!!」
「!?」

先輩も、身体能力上がってるのかって、思っていたら。
きっと金髪の人…多分、シャル…がタカト先輩にも見えたんだろう。
でもシャルにそんな話しかけれるって先輩ってハンター読んでないの?知らないの!?あんな名作なのに!…ってそうじゃなくて…。

「ちょっ…っ痛!」

あの人はやめた方がいい、助けてくれるはずない。
そう言おうとしたんだけど右腕の激痛はどんどん激しくなっていって、口にすることが出来なかった。

そうこうしてるうちにシャルはこっちに気付いて近づいてきてるし!

「どうしたの?こんなとこで」
「なんか俺たち気付いたら森にいて、そしたら変な生き物に襲われて…」
「こっちの子?あー、この爪痕はクマヘビだね。もしかして走ってきた?」
「はい」
「じゃあそろそろ毒が回る頃じゃないのかな、ご愁傷様」

ほら見ろ助けてくれるわけが…って毒!?
クマヘビっていう安直な名前も気になったけど毒ってどういう…えっもしかしてあたし死んじゃう系?
こんなとこに先輩だけ残して死ぬのやだよ!まだ告白もしてないのに!

「ご愁傷様って…せめて医者がいるとこでも教えてください!」

あーでも先輩があたしのために怒ってくれるとかちょっと嬉しいかも…めっちゃ心配してくれてるしふへへっ。

「医者って言っても、こっから街に行こうとしたら3時間はかかるよ?それまでにその子死んじゃうって」
「そんな…っ!」

先輩の顔が悔しそうにゆがむ。
あ、どうしようなんかすごく申し訳ない気分になってきた。
もしかして「俺のせいで」とか思ってんのかもしれないこの人。あたしが自己満で助けただけなのに。
だからこんなに必死になってくれてるのかな。

「…ん、」

でもどうしよう、頭ぼーっとしてきたし、なんか体がめちゃくちゃ熱い。これ毒まじでまわってきてんじゃね?
確かシズクの念って毒除去できたよね?でも今ここに彼女いるとは限らないもんな…。
あーやばい死にたくない。

今死んだら先輩を傷つけかねない。
それだけは絶対に、嫌だ。


どうにか助ける術はないのかと、先輩はシャルに詰め寄っている。
だんだんシャルの目が鬱陶しそうに、鈍く光っているのを見て、じわりと冷や汗が浮かんだ。
けどそこで、シャルがぽつりと呟く。

「そういえばシズクがいるんだっけ」

その一言を耳にした瞬間、あたしは口を開いた。

「シャル、ナークさん」
「っ!?」
「クロロ…元気?」

どの言葉が1番助かる可能性が高いかなんてわからない。
もしかしたらこの一言で殺されるかもしれない。先輩の命も危ないかもしれない。
でもあたしは、その一言に賭けた。

シャルがアジトにつれてってくれることを。
シズクに頼んで毒をぬいてくれることを。


すべては、先輩のために。






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