意気揚々とイヤホンを付けて音楽プレイヤーを弄りながら、曲にオーラを乗せる練習をしている先輩。なんかもうこわい。
深く考えないようにして、あたしも少し離れた場所でオーラを変化させて色んな性質をつけさせていた。


五行思想。すべての物は、木・火・土・金・水の五種類の元素から出来ているっていう説だ。陰陽師とかの関連で、割と知っている人は多いと思う。
木は春、火は夏、土は季節の変わり目、金は秋、水は冬を象徴としている。また、木は樹木の成長を、火は灼熱さを、土は万物の育成・保護を、金は金属のような堅固さを、水は命の泉を、兼ね備える性質を持っているそうだ。

あたしが3次試験で使ったのは、火。だけど性質としては、恐らく木だ。
木生火。木が燃えて、火になる。だから、成長…細胞の活性させる性質を持つ、炎。
それが、矛盾の正体。だとしたら。
木から火、火から土、土から金、金から水、水から木。それぞれが他者の性質を、持つのなら。

足下の土をすくい取り、顔の前まで持ち上げた。
土は、火の性質を持つと言うことか。火の灼熱さ。…うん、何をしたらいいのかまったくわからない。
オーラを土に変化させる?それとも土にオーラを送って操る?ああもう特質系だったら五行じゃなくて五麟にして5匹の麒麟従えさすのに!自分で言ったけどそれすごいかっこよさそうだね!


行き詰まった思考回路にため息をついて、とりあえず今のところはなんとなく使えている炎を手に灯す。
傷を癒す炎が矛盾なら、盾で敵を倒すのも矛盾か。矛盾だけにってか。

「すげえな、熱くねーの?」
「わ、先輩。大丈夫ですよ」

不意に、後ろからぽんと肩を叩かれた。

「ただの火…じゃねえよな。なんか能力あるのか?」
「ええと、これは火なんですけど、木行の性質を持っていて…。…まあ簡単に言うと怪我を治す炎です」

目についた、先輩の腕にある切り傷に炎をあてれば、うわっと驚かれる。
しかし熱さは無く、ゆっくりと消えていった傷跡に先輩は小さく息を吐いた。

「念って、すげーんだな…」

原理はわからないけど、そうなる。
これはトリップ特典で強くなったからなんだろうけど。

先輩は、俺もがんばんなきゃなーと呟きながら、あたしから離れていった。


今日はこのぐらいにしとこう。攻撃はまあ、発が無くても事足りてるんだし。

集めた葉っぱと木の枝に火を付けて、魚を焼く。
もしかしたら煙で他の受験生に居場所がバレるかもしんないけど、バレたところであたし達が負けるような相手はここにはいないし、問題ない。

「どうしようかな」

ゴンが少し気になる。
ヒソカと対峙して、ゴンが落ち込んでしまう展開は覚えていた。けれど、それが具体的に何日目なのかまでは覚えてない。
ゴンがどこにいるかは円を広げればすぐにでも見つけられるけど。

見つけたとこで、あたしにどうこうできるわけじゃないしなあ…。慰めるのはクラピカがしてくれるんだし。

「まあいっか…」

もし、展開上あたしが必要になるんだとしたら、自然と出会うだろうし。
今は先輩とのんびりしよう。






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