その後もマシンガントークをやめないイルミを、出来れば記憶が飛ぶことを願いながら強制的にベッドに沈め、あたしは部屋を出た。
時間は…うわもう12時半?日付変わってんじゃん、イルミ喋りすぎだろ。

「…、あ」

通路を歩いているところで少し向こう感じたのは、ちょっとオーラがとげとげしてるキルアの気配。
そんでもってあたしの前には受験生が2人いる。
多分あのシーンかな、と目星をつけて、さてどうしようかと頭をひねる。

受験生が2人死ぬことは別にどうでもいい、だってそういうストーリーだし所詮モブだし。
でもキルアが無駄に殺しをするのはなんかちょっと、うーん。って感じ。
…しゃーない、手ぇ出すか。

受験生2人とキルアがぶつかり、キルアの手が2人に伸びようとしたところで、ぱしっとその手を掴んだ。
キルアの目が、ゆっくりと見開かれる。

「この子も悪いけど、あんたらもくっちゃべってないで前見て歩きなよ」

軽く殺気を飛ばせばぶんぶん首を縦に振る受験生2人。そいつらをほっぽいて、キルアの手を引きまた適当な部屋に入った。
さっきみたく自分の分のお茶をいれ、今度はキルアのためにココアをいれる。暑いだろうから氷も入れてアイスココアにした。
茫然自失というか、何が起きたのかわかってないようなキルアの前にコトンとココアの入ったカップを置けば、ゆるゆるとその視線があたしの方へと動く。

「何で、ミズキが、」
「たまたま通りかかっただけ。邪魔しない方が良かった?」
「…いや…、サンキュ」

俯くキルアにも少なからず、殺さなくて良かった、っていう思いがあるらしい。
殺しへの罪悪感っていうかなんていうか、まあそこら辺はあたし人殺したことないんでさすがにわからないけど。

もしあたしがまじでイルミと結婚したらあたしも暗殺業しなきゃいけないのかな?
…まあそんなもしもは起きないと信じているが。

「とりあえずココア飲みなよ」
「ん…」

ソファーに座るキルアの隣に腰を下ろし、あたしもお茶をすする。
ホテルとかについてる煎茶って地味に美味しいよね、なんかたまに無性に飲みたくなるときがある。
とはいえさっきも飲んだばかりなので、二口ほど飲んだ辺りであたしはお茶をテーブルの上に戻した。

「何があったかとか…訊かないの?」
「別にー、興味ないし」
「…ミズキって、タカトがいねえとなんか口悪いよな」
「今それ言う要素あった?」

普通に喋ってるつもりだったんだけど。敬語かそうじゃないかくらいの違いしかなくない?
え、あたしそんな口悪いのかな…。
1人悶々と悩んでいたらキルアがぶふっと吹き出した。なんなんだよちくしょう!

「ほんっと、ゴンもタカトも、ミズキも変なヤツ」
「類は友を呼ぶっていうからねえ」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味だよ」

いやまあ原作の中ではキルアって結構常識人寄りな気がしないでもないけどね。
言われたら言い返したくなるこの気持ち。

けど、あたしの発言にキルアがあまりにもふてくされてるから、キルアの頭を軽く撫でながら冗談だよと謝った。
ふわふわの猫っ毛を撫でるのは気持ちがいい。ほんとにふわふわしてる。銀魂の銀ちゃんもこんな感じなのだろうか。

「あ、んま、ガキ扱いすんなよ!」
「してないしてない」

言いながらもぐりぐりと頭を撫でる手は止めない。

「してんだろ思いっきり!」

怒りながらもあたしの手を振り払うことはしないキルアは、ゴンの言うとおりやっぱり頭撫でられるの好きなのかなーと思う。
そう考えたら少しにやけた。ツンデレかわいいよツンデレ。

「子供扱いしてないから、ほらシャワー浴びてきて寝なよ。寝ようと思ってたんじゃないの?」
「…そりゃ、そうだけど」
「なら部屋にもシャワーついてるみたいだから浴びてきたら?」
「お前はどうすんだよ」

キルアの、恥ずかしいけど勇気振り絞って言いましたみたいなその発言にぱちくりしながら、そうだなあゴンとネテロ会長の遊びでも見に行こうかなあとか考えつつ、別の部屋行って寝るよと答えた。
ら、なんだかキルアは不服そうだ。なんだよ最近の子供の考えることはわからないよ。

「なに、それとも一緒に寝る?」

冗談交じりににやにや問いかけてみれば、予想外にもキルアは顔をほんのり赤くしながらこくんと頷いた。
…あらかわいい。

「別に俺が寝て欲しいわけじゃなくて!ミズキがそう言うなら仕方なくな!寝てやらなくもねえっていう!」
「わかったからシャワー浴びてこいって」
「うううるせえよ今行こうとしてたんだよ!」

もうすぐ12歳だっけ?キルアって。なんだなんだかわいいなーってなりつつタオル片手にシャワールームへと消えていくキルアを見送る。

その後キルアの髪を乾かしてあげ、一緒にベッドに入ってあたしはぐっすりと寝た。
子供体温のキルアは抱き枕にはちょうど良かったです。
ただキルアはときたまもぞもぞ動いて寝づらそうだったけども。





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