「飛行船の中探検しようぜ!」
「うん!タカトとミズキも一緒に行こう!」
「お、行く行く!」
「あたしはパース」

ちょっと残念そうな顔をするゴン。かわいいけどあたしはもう疲れてるしシャワー浴びたいのよごめんね。
くしゃりと頭を撫でていってらっしゃいとゆるく笑えば、ゴンは元気に頷いて3人で走っていった。
若いっつーか元気だな、タカト先輩も…。

残ったのはあたしとクラピカとレオリオ。
2人もぐったりと3人を見送っていた。

「そういえば…試験はあといくつあるんだろう」
「あ、そういや聞かされてねーな」

次が3次試験だからそれ合わせてあと3つだな、なんてあたしは言わない。だってもう口開く元気もあまりないのよ。
なのにクラピカがあたしの方をきゅるんきゅるんした目で見るもんだから。

「ミズキお姉さんはどう思う?」
「え?あーっと…3つくらいかな。試験は平均して5つか6つ程度らしいから」
「ならばなおのこと休んでおいた方がいいな」
「そゆこと」

さすがミズキお姉さんだなんてあたしを見上げてくるクラピカの視線がなんだか恥ずかしい。
博識とかじゃないんだよ、元から知ってるんだよ。

てゆか今の時点では2歳くらいしか変わらないんだからその「ミズキお姉さん」っていうのやめて欲しいな…!照れるから!
そう伝えれば、クラピカはしばらく逡巡した後、困ったように笑った。
どう呼べばいいかまったくわからないらしい。ゴン達が呼び捨ててるんだから呼び捨てでいいじゃないの。
ほんと変なトコ律儀な子だなあ。

「ミズキでいいよ」
「いやしかし…私はミズキお姉さんを尊敬していて…」
「…うーん」

じゃあ、ミズキさんで…と渋々といった様子で呟いたクラピカの頭をありがと、と撫でる。
まずお姉さんってキャラじゃないからね、ほんと恥ずかしいのよね。
いやーよかったよかった。

「じゃああたしシャワー浴びてくるね」
「おお、行ってこい」
「私たちは適当な場所で寝ているよ」
「りょうかーい」

クラピカとレオリオに見送られて、シャワーを探しに船内を彷徨う。
どこにあるのかなー早くさっぱりしたいのになー。

うろうろしてたらキルア達のいる場所に出たらしい。とっさに絶をして影に身を隠した。
ちょうどキルアの家族話を先輩とゴンにしているところ、か。
先輩はキルアのことどう思うんだろうとなんとなく聞き耳をたてていたら、思いの外気にしてないようで普通に相づちを打っていた。あの人ほんと大物な。

「ゴンもタカトも変なヤツ」
「でもミズキも気にしないと思うけどな、まじかすげえってキルアの頭撫でそう」

ああ、事前知識なかったらやりそう。

「あははっ確かに!ミズキって俺たちの頭撫でるの好きだよね」
「俺はガキ扱いされてるみたいで嫌だけどね」
「とか言ってキルアも嬉しいくせに」
「なっ!んなことねーよ!」

うわあ自分のいないとこで自分の話されるのってなんかやだ、恥ずかしい。
好きな人たちばっかなだけに、なんか、ひょあああってなる。言葉にし難いんだけど、わかってほしいこの感じ。

あたしはこんなとこでこの話を聞くのをやめてさっさとシャワーを浴びに行くべきじゃないのだろうか。うんそんな気がする。
よし行こうすぐ行こうと足を踏み出した、ら。

「俺、ミズキに頭撫でてもらったことねーけど」

っていう、先輩の声が聞こえた。

…いやそりゃ当たり前でしょう!先輩年上だもの!いっちゃえば旅団の人たちの頭も撫でたこと無いよ多分!
あ、いやフェイタンとコルトピの頭は撫でたことあるわ。でもあの2人は私より背低いしなあ。

「そりゃあれじゃね?ミズキ、タカトのことセンパイーって呼んでんじゃん。尊敬してんだろ?そういう相手のこと頭撫でたりはしないだろ」
「尊敬ねえ…年上だからそう呼んでるだけだと思うけど」
「でもミズキってタカトのこと大好きだよね!」

ゴンおまえええええ!
びっくりしすぎて変な声出そうになったわ!なんてこと言ってくれるのゴンくん!

「ああまあ、確かにな」

キルアもにやっにやしながら同意すんなよおまえのポケットの中に入ってるチョコロボくん粉々にすんぞ!

「でもそれ言うならゴンとキルアのことも大好きだろあいつ。あとクラピカとか」
「あ、そっか。俺もミズキのこと大好きだしね!」
「ほらな、そういう好きだって」

なんだろうこの嬉しいような哀しいよな微妙な感じ。
もうなんか自分がいたたまれなくなってあたしはそっとその場を離れた。

シャワー浴びて、今のことは忘れよう…。





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