「おっ、タカト先輩」

近所の某レンタル店に向かっていたら、前方に同じ部活の先輩。
絶賛片思い中の相手。

休日なのにラッキー、テンション上がってふへへって変な笑みを浮かべてしまった。

どうやらタカト先輩も目的地は一緒のようで。
それは手に持っている某レンタル店の袋からも推察できる。
何か話そうかな、CD何借りたんですかーとかでいいかな。
そうやって胸を膨らませながら、先輩に話しかけようとちょうど入り口を通るところの先輩に駆け寄る。
あたしも入り口に差し掛かって、ふと何かに気付いたのか先輩がこっちを振り向いた、その瞬間に――。

「っえ、?」

周囲が真っ暗になって、でも先輩の姿だけは見えて。

「は、なに…。あれ、ミズキ?」

先輩もあたしに気が付いて、疑問符を浮かべていて。

「なにこの状況…ミズキわかる?」
「いや、全然…」

だよなあと頷くタカト先輩。
こんな非現実的なことが起きるなんて、しかも先輩と2人でいるときに!
漫画か小説かよと思いつつもまあかなり嬉しい状況でもある、命に関わらないのなら。

さてどうしたものかと2人で唸っていたら、不意に、ゴーン…ゴーン…と鐘の鳴る音が聞こえた。
日本の除夜の鐘みたいなあれじゃなくて、教会とかについてるような鐘の音。

そして、視界が開けた。

「眩、し…っ」


++++


瞳に映ったのは、見事に繁りまくっている自然だけ、だった。
きょろきょろと見回してみるも、あるのは木、草、木、草、それだけ。

うわあなんかすごい嫌な予感がする。

「森、か…?なんでいきなりこんなとこに…」
「どうします?」
「んー、どうすっかな」

若干下り坂っぽいから、ここが山なら下っていけばこの森をぬけられるかもしれないけど、助けが呼べるのなら動かない方がいいに決まってるんだし…。
あ、でも携帯圏外だわちくしょう。

「てかミズキ、目ぇなんかすげえことになってっけど」
「え、え?すげえことってなんですか」

きょろきょろしてた先輩の目があたしの目をじっと見つめる。うあ照れる。
でもすげえことって、別にあたし自身は自分の目に違和感とか感じないんだけど。

「なんか黄色?金色?っぽくなってる」

えー。
っていうか、ん?

「それ…先輩もなってます」
「まじかよ!」

なんか2人して金だか黄だかの瞳になってしまったらしい。

某レンタル店の入り口から森に出てしまうわ目の色変わるわ、今日はいったい何の日なんだ。





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