地下を抜ければ、目前の広がるヌメーレ湿原。おお広い。でもすげえ湿気。
ゴンとキルア、あたしとタカト先輩の4人でヌメーレ湿原の景色をぽかんと見ていたら、サトツさんの話が始まった。

「なあミズキ、ここってそんな危ないのか?」
「まあ一般的には…先輩くらいなら油断しなければ大丈夫ですよ」

サトツさんの話を聞きながら疑問をもったらしい先輩の質問に答える。
この湿原、確かに気味は悪いけどそれなりに身体能力と判断力があれば問題はないと思う。まあまったく迷わずに進むのはかなり大変だろうけど。

「ウソだ!そいつはウソをついている!」
「お、始まった」
「なんだあいつ?」

人面猿。このシーンも懐かしいなあ。
原作の初期の方なのに結構ハッキリ覚えてる自分に軽く呆れながら、ことの成り行きを眺める。
確かこの後ヒソカがトランプをあの人面猿とサトツさんに投げるんだよね。

…しかし人面猿の説明長いな。

飽き飽きしてきたあたしがふわ、とあくびをした瞬間、2枚のトランプがあたしと先輩めがけて飛んできた。
あくびをしたときに口元を押さえた手を少し動かして1枚目をキャッチし、2枚目は手から放ったオーラではじき飛ばす。
可能性は考えてたけど、まさか本当にこっちにまでトランプ投げてくるとは思わなかったわヒソカこのやろう。

「くっく、なるほどなるほど」
「楽しそうに笑ってんじゃねえ、よっ」

きっとちゃんと選んで飛ばしたんだろうハートのエースのトランプを半分に破って、片方はヒソカ、もう片方は逃げようとした人面猿へと投げ飛ばす。
脳天にトランプが刺さった猿はそのまま倒れて、ヒソカは腹立たしいことに破れたトランプを余裕でキャッチしていた。オーラになんか仕掛けてやりゃ良かった。

「ミズキお姉さん、大丈夫だった?」
「ゴンは良い子だね…大丈夫だよ。あとミズキでいいよ」
「あ、俺も兄さんとかいらない」
「そう?じゃあミズキとタカトで!」

にっこり笑うゴンを撫で撫でして癒してもらう。
ああ本当にかわいいなあかわいいなあこのままお持ち帰りしたいなあ。

ゆるみまくった顔をなんとか隠して、再び始まったマラソンの為に走り出した。


++++


レオリオと共に、だんだん濃くなってきた霧の中を走っていく。
ゴンとキルアは先頭を走っているらしい。本当に、すごい体力だ。
さっきの出来事のおかげで体力は少し回復できたが、このぬかるみの中を走っていくのはなかなかきつい。

「レオリオー!クラピカー!キルアとタカトとミズキが前に来た方がいいってさー!」
「行けるならとっくに行っとるわ!」
「そこをなんとかがんばってきなよー!」

前方からのゴンの声。緊張感がないというかなんというか…いや、ゴンらしいか。

「ったく…つーかタカトとミズキって誰だよ」
「まったくだな」

にしても、ミズキ、か…懐かしい名前だ。
あの日、私たちクルタ族を救ってくれ、そして忽然と姿を消した、ミズキお姉さん。
元気でいるのだろうか。
彼女を捜して、改めてお礼を言うために私はハンター試験を受けに来た。
もう私たちは守ってもらう必要がないくらい強くなったのだと、伝えるために。

もしかしてゴンの言うミズキ、がミズキお姉さんなのではないかと淡い期待を抱くが、まさかそんなことは無いだろう。
世の中は、そんなに甘くない。





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