この世界に来て最大の障害、それは言語だと思う。
いや、話す分には全く問題ないんだ。何でかはよくわからないけど普通に通じているから。
旅団のみんな曰く、普通にハンター語を喋っているとのこと。あたしと先輩は普通に日本語を喋っているつもりで、みんなの言葉も日本語に聞こえるんだけどね。
まあそれは自動翻訳こんにゃくみたいな何かが作用してんじゃないかと半ば強引に納得している。

問題は、文字の方。
読むのは…まあぎりぎり、１文字１分くらいのスピードでいいなら読める。１分もかからずに読める文字もあるけれど。
書くのはまだかなり難しい。記号みたいなあの文字を書こうと思うと、あいうえお表が絶対に手放せない。

覚えるのなんて、いつになることか。

「ミズキ、今どんくらい書ける？」
「あいうえお表がないとまだまだ無理です…」

先輩と２人して、パクに本屋で買ってきてもらった小学生用のドリルとにらめっこ。
高２になってまでこんなドリルを解く羽目になるとは思わなかったよと苦笑する先輩に、そうですねと頷くことしかできなかった。
小学生の時はこういうドリル、夏休みの宿題で使うんだったっけなー…１ページもやらずに提出して怒られた記憶があるわ。
そんなことを思い出しながらも、あいうえお表とドリルを交互に見ながら、文字の練習をしていく。

「異世界の人間は大変だな」
「でも見た限りミズキ達の世界の言語より、ハンター語のがよっぽど簡単そうだけどね」

あたし達の勉強タイムを見下ろして笑いながら話しているのは、シャルとフィンクス。
原作読んでたときはそんなに思わなかったけど、この２人って結構仲が良いと思う。
というか、シャルが誰とでも仲良くなれるタイプなのか。本心はさておき。

「だって日本語だっけ？漢字とカタカナとひらがなって３種類も使うんでしょ？相当な高等言語だと思うけど」
「まあ、うん」
「でも俺らにはそれが普通だしなあ」
「元いた世界でも、日本語は難しい言語の方に入るらしいけどね」

まあ、あたしにとってみれば英語のがよっぽど難解なんだが。


＋＋＋＋


「「終わっ、たー！」」

もう疲れた寝る！と言わんばかりの勢いでドリルとシャーペンを放り投げ、あたしと先輩はその場に倒れ込んだ。
久々の頭を使う作業は疲れる。この前のパソコンいじったときもだいぶ疲れたけど。

パソコンといえば、ヒソカはあの後何か用事が出来たらしく、携帯で誰かと一言二言話をしてからひどく残念そうに仮アジトを去っていった。
「絶対またすぐ会いに来るから、寂しがらないでね」とかなんとか言ってたけど、あたし的にはやっと平穏がやってきてありがたいばかりだ。コルトピにも笑顔が戻ったし。

「あら、終わったの？お疲れさま」

そう言って淹れ立てのコーヒーを差し出してくれたパクにお礼を言って、コーヒーを受け取る。
先輩も起きあがって、ありがとうございますと笑ってパクからコーヒーを受け取った。

…なに嫉妬してんだあたし。パク相手に。

つーか先輩、女性陣には敬語なのね。
あたし誰にも敬語使ってない気がする…もしかしてダメかなこれ。いやでもなんか今までため口だったのにいきなり敬語になるのもあれだしな…。
うーん…よし、次に新しいメンバーが来たら、その人には敬語を使おう。




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