慣れた。

ヒソカがこの仮アジトに来て1週間。
飽きる様子もなくあたしを追いかけてくるヒソカにはほとほと参るが、それも慣れてしまえばなんてことはない。
最近ではもう鬱陶しいとすら思うこともなくなった。せいぜい「またか…」ぐらい。
疲れた表情で、けれどヒソカに対して怒ることはなくなったあたしを見てマチやパクはひどく心配してくれたけど。

「かといってあんまくっつかれると暑いんだけど、今の季節考えてよ」
「ボクは暑くないけど」
「あたしは暑い」

膝を立てて座っているヒソカの足の間に、あたしが三角座りをしているこの体勢。しかもヒソカはがっちりあたしを後ろから抱きしめている。
ここの季節はちょうど春から夏に変わる頃くらいだったらしく、最近では暑い日も増えてきた。
それでもこの地域は涼しい気候の方らしいから、日本と比べればだいぶマシ。

とはいえ四六時中、大の男に抱きしめられていたら、暑いもんは暑い。
離してっつってもこいつがあたしの言うこと聞くわけ無いから、諦めるしかないんだけど。

「そういえば、今日はタカトがいないんだねぇ」
「ああ…うん」

今日、先輩はフィンクスとシャルの2人と一緒に街に行った。携帯やパソコンを買いに行くんだと。
やっぱり男同士気が合うのか、あの3人は最近仲が良い。くっそうらやましい。

先輩はシャルとフィンクスと一緒で、あたしはヒソカとか。はずれくじにも程があんぜ…。

「寂しいのかい?」
「そりゃまあね」
「ボクがいるのに」
「クソピエロと先輩を一緒にすんなよ」

淡々と会話をこなしていきながらも、あたしは手を休めない。
今いじっているのは、シャルにもらったパソコンだ。
説明書片手に設定を変えたりいろいろしてみてるんだけど、もともと機械に疎い性格なのが災いしてイマイチ使い切れていない。
勉強になるかと思ってシャルにわざわざ設定を全部初期化してもらってから、自分でハッキング対策とかの処理をしていこうとしているんだけど。
なかなか、うまくはいかない。
うまくいったらこれを使って、んで念を覚えたらそういうのも使って、よくある小説みたいに情報屋や何でも屋みたいなことをしようと思ってるんだけどな。

「やっぱりレベルが高いか…」

舌打ちしながら説明書を握りしめれば、ヒソカがふむ、と喉を鳴らした。

「それはボクが口を出してもいいのかい?」

少し逡巡して、分かるならお願い、と呟く。
本来ならシャルに聞きながらやるとこだけど、シャルいないし。
ヒソカでもわかるなら助けてもらって損はないでしょ。これでもこの世界で強い方の人なんだし。頭は悪くなさそうだし。

「この設定をするならまずここから…」
「うん…あー、なるほ」

何この人、説明上手だな。
さっきまでまったくもって分からなかったところが、ヒソカの説明のおかげですらすらわかる。すげえ、こええ。

ある程度の設定が終わったところで、ぱたんと説明書を閉じて一息ついた。

「あんたって意外と機械にも精通してんのね」
「奇術師に不可能はないからね」
「へいへい」

ネットに繋げて、適当なページを暇つぶしに眺めながら、ぼそっと呟く。

「まあ…ありがと、ヒソカ」

瞬間、あたしを抱きしめていた腕の力がゆるんで…すぐにぎゅうときつく抱きしめられた。
ちょ、苦しい!

「耳真っ赤にして…ミズキはカワイイなあ」
「うるっせえさっきのやっぱ無し、忘れろ」
「やだよ」

やだよって、子供か。そんな言い方してもかわいくないぞ。





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