夜はマチに匿ってもらって、平和に寝ることが出来た。
いや一応勝手に自分で用意したあたしの部屋、っていうか服置き場みたいなとこもあるんだけど、そこで寝てたらヒソカが来るんだよ。多分わざわざ絶までして。
あたし念使えないから絶しなくても物音とかしない限り気付かないのにね…。気配読むとかも基本できないし。
…シャルにでも教えてもらうべきか…。


そして次の日の朝。
シャワーを浴びてても着替えていても煙草を吸ってても先輩達と話をしていても、ヒソカがやってこない。
もしかしてこれもうヒソカ帰った?帰ってくれた?

「この世の春が来た…!」
「何言ってんだ」

拳を握って喜びを噛み締めていたらすかさずフィンクスにツッコミをいれられた。
だってこれもうヒソカ帰ったんじゃね!平和じゃね!と興奮しながらまくしたてれば、おお…と若干引き気味に答えられる。そんな冷たい反応しなくても。
良かったね、と笑ってくれるコルトピを膝の上に乗っけてなでなでしていたら、何かが頭にぽす、と当てられた。

見上げてみれば、先輩。

「あの変態もういねーの?」
「みたいです!」

ぽす、と頭に当てられたのは紙パックのミルクティーみたいで。
くれるそうなのでありがたくもらった。
あーこれ飲みたくない、飲まずに消費期限ぎりぎりまでとっておきたい。先輩からもらったミルクティーとして。
でもちょうど喉乾いてたから仕方なく飲んだ。

あたしとフィンクスが横並びで座ってるから、タカト先輩はあたしの少し上の瓦礫に腰をおろした。
自分の分らしいレモンティーの紙パックをあけて、ストローをさして飲んでいる。
そんな姿もかっこいいです先輩…!

久々に心の底から目の保養が出来た気がしてあたしのテンションはだだ上がりだ。
やっぱりどんなにヒソカがイケメンだとしても先輩っていうか好きな人には敵わないよね。だってあたしヒソカがしてることをもし先輩にされても普通に照れておろおろして終わるだけだと思うし。
いやまあ下着漁られたらさすがに引くけど。
てかまあ先輩そんなことしないけど。


そんな感じで久々の平和を味わっていた、のに。
不意に嫌な予感がして、あたしはコルトピに一言ことわってから立ち上がった。

「どうしたの?」
「や、なんか、ちょっとあたし買い物にでも…」

行こうかなーなんて、って、言おうとしたら。

フィンクスとコルトピがいきなり飛び退いて、さっきまであたしが座っていた場所に、ヒソカが現れた。
…こいつ上の階から飛び降りてきた!?わざわざ何してんだ!

「やあミズキ、昨日ぶり。ボクがいなくて寂しかったかい?」
「んなわけないだろ…」
「つれないなあ」

天国から地獄とはまさにこのことか。
しかし、このヒソカ…。

「何でノーメイクにスーツなの…」

花束まで持ってるし。これからデートでも行くわけ?てかその格好でよくここに来れたな。
フィンクスとかもう目が点になってんじゃん。

「ミズキのために決まってるじゃないか」
「…はあ?」

え、なに。つまりどゆこと。
あたしが昨日ヒソカに気持ち悪いって言ったからこうなったの?だからヒソカさんノーメイクにスーツなの?あたしを萌え殺したいの?
てか何であたしがスーツ萌えだと知っているのか…!勘だったら怖いんだけど!

「くっそむかつく…でもイケメン…抱かれたいレベル…」

心の中で思ったつもりが口に出ていたらしい。
その場にいた旅団員と先輩に頭を心配されてるような目で見られた。いやでもこのヒソカのかっこよさは異常でしょ?

「じゃあ今夜、どうだい?」
「キメ顔がうざいからさっきの無しで」
「ミズキは酷いなあ」

でもヒソカ、その姿はかっこいいけど、やってることが同じだからあんまり意味無いよ。





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