最初に気が付いたのは、シャルだった。
次いでフィンクス、コルトピ、マチが焦ったような、驚いたような表情で勢いよく立ち上がる。
他のメンバーはここにはいなかったからわからないけど、とにかくこの場にいた全員が「何か」に対して警戒していた。

「ど、どうしたんだよ」

何か嫌な予感はする、けどそれが何かはわからない。怖いとも気持ち悪いともつかない感情が背筋をはい上がってくる。
俺の分からない、変な「何か」が上の方から流れてくる、そんな感じだった。

「わかんねえ、ヒソカのオーラじゃねえ…」
「これ…ミズキだ!」

1番に走り出したのはコルトピで、一瞬唖然とそれを目で追っていたみんなも、次々に走り出していく。

フィンクスに「お前はここにいろ!」って言われたけど、でもコルトピはミズキの名前を言ってた。俺だけ無関係ってわけでもないはず、なのに。
ヒソカがミズキに何かしたとか?じゃあまた、ミズキが怪我するかもしれない。

「ー…っ、」

追いかけたい、けど、足が動かない。
漠然とした恐怖みたいなモノのせいで、俺の足は地面に縫い止められたようにかたまっていた。

「…、ミズキ…!」


++++


いや別にね、本気じゃないだろうなとは思ったよ。
ヒソカだってバカじゃないんだし、タカト先輩を殺すことには何の意味もないんだから。
でもさ、好きな人を殺すって、本当に殺すことの出来る人に言われちゃったらさ、焦るじゃん。

だからってまあ、この展開はさすがに読めなかったんだけど。

「もしもーし、ヒソカさーん…?」
「……」
「あーだめだな、完全に気ぃ失ってるわコレ」

ちょっとキレたというか、なんというか、怒っただけなのに。
「っざけんなよ、先輩に手ぇ出したら殺す」って、ちょっとね、お前何様だよ的なキレ方をしちゃっただけなんですよあたしは。ヒソカ相手に我ながら何言ってんだと。

でもそれだけでヒソカさんすげえ苦しそうにして気が付いたら倒れちゃってました。なにこれこわい。

「ーっミズキ!」
「わ、っと、コルトピ?」

ぺちぺちと気を失ったままのヒソカのほっぺを叩いていたら、後ろからいきなり抱きつかれる。コルトピだった。
大丈夫?怪我はない?ってあたしの心配をしてくれるコルトピは天使みたいだ。
さっきまでヒソカの相手してた分余計にかわいく見える。

「大丈夫だよ、あたしは」
「ちょっ、何でヒソカ倒れてんの!え、これミズキが!?」
「ンなわけねえだろ、こいつ念も使えないんだぞ?」
「でも、ここにはミズキしか…」

次々に現れてくる、シャル、フィンクス、マチ。てか何でここわかったんですかみなさん。

「…ミズキ、いったい何があったんだい?」

倒れたままのヒソカを蹴り飛ばして、マチがあたしの前にしゃがみこむ。ほんとにヒソカの扱い悪いな。

にしても、何があったって、言われてもなあ…。

「ちょっとヒソカにキレたら、なんかよくわかんない内にヒソカが気を失ってて…あたしも何がなにやら」
「…、」

苦笑するしかない。

シャルの、とにかく下に戻ろうとの言葉に従って、あたし達は広場へと向かった。
気を失ってんだしヒソカもつれてったげた方がいいかなーって、ちょっとだけ思ったけど、やっぱりまだむかつくから放置することに。
てかあたしが何も言わなくてもみんなヒソカを放置する辺りなんとも言えないね。





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