馬鹿野郎


階段の所為でほんっとに満身創痍なのだけど、なんとか毛利さんの前へと現れることが出来たわたしは、初めて目にする生毛利にほんの少しテンションが上がってしまった。

「漸く来たか、」
「毛利野球しようぜー!おまえボールな!」

輪刀を掲げわたしへと向かってくる毛利さんの攻撃をはじき返し、どーん!と笑顔で言ってのける。
一瞬空気が固まって、毛利さんがとんだアホ面を晒していることに吹き出しそうになっていたら、背後から何かにぶん殴られた。
大谷さんの珠だった。

「……三成」
「すまん。野球もボールも貴様に理解は出来ない物だったな……。ならば毛利、蹴鞠をするぞ!鞠は貴様だ、拒否は認めない」
「三成」
「……冗談だ、そう怖い顔をするな」

あれこれ大谷さん似たような台詞どっかで言ってたな。

とまあ冗談はさておき、「これは頭でも打ったのか?」「まあ、そうさな……ぬしの言う通りよ」なんて話している黒幕組に舌打ちでもしておいて、お仕事モードに入る。
わたしの雰囲気が変わったことに毛利さんも気が付いたのか、バックステップで距離を取り、輪刀を構え直した。

「毛利、従属しろ、拒否は認めない」
「フン、口の利き方を知らぬ者が……出直してこい」

えっ三成こんなんだったじゃん別にいーじゃんダメなの!?の意志を込めて、毛利さんと斬り合いをしながら大谷さんに視線を向ける。
「三成はまだ若いゆえ」とか言っていた。若さだけじゃ許されない事もあるんだよ。

ううんでもこれで同盟とかマジ無理だわー、みたいな展開になっても困るしなー。
つーか絵巻の記憶ほとんど無いんだよね。毛利さんと三成ってどんな感じで同盟組んでたっけ?全然思い出せない。スタイリッシュスライディングしてた毛利さんしか思い出せない。あれには腹筋鍛えられた。
……仕方ない、わたしなりにアプローチの仕方を変えてみよう。

「毛利、貴様の力が必要だ。私と共に戦ってはくれないか」
「……大谷、やはりこの男は頭を打っているのではないか?」
「(これでもだめか)……べ、別に貴様と酒を酌み交わしたいわけじゃないんだからな!」
「……大谷、」
「三成、ぬしはもう喋るな」
「ウィッス」

どうやら大谷さんがガチギレしてるようなのでお口チャックしまーす。

毛利さんはあまりにもおかしい三成の相手をする気が失せたのか、「まあよいわ」とため息を吐いて輪刀をおろした。
あ、これ終わりでいいのかな?とわたしも刀を鞘におさめる。

「大谷、このような男が西軍の総大将で、大丈夫なのか」
「……やるときはやる男よ、われはそう信じておる」
「我にはそうは見えぬが……。大体、あれは本当に石田か?」
「当然よ、トウゼン」

にしても安芸の空って綺麗なー、なんて、背後の黒幕組を気にもせずわたしはぼんやり空を眺めるのであった。

ちなみにその後、大谷さんにこっぴどく叱られたので、今後は三成のキャラを壊すような真似はしないよーにしようと思います。
まあ思うだけなんですけどね!?
あと体中めっちゃ痣だらけでつらい。

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