楽しみ


「ぬしにしては上手く事を済ませたようだな」

ヒヒッ、と漏れ出る引き笑いに軽い笑みを浮かべ、姫さんが良い人でしたからと返す。
大谷さんはまた引き攣った笑い声をあげた。

「して、もう二、三、縁談の話があるのだが」
「……いい加減にしろ、刑部」
「ヒッヒ、ぬしの物真似も板についてきた」

どうせ今まで三成に来た縁談なんか大谷さん側でシャットアウトしてたんだろ?そうなんだろ?わたしなんとなくそういうの察せるよ!?
今回はたまたま、大谷さんが拒否るには良いとこすぎる家だったのかもしんないけどぶっちゃけ大谷さんなら何とか出来たでしょ!わたしは大谷さんの実力を信じてます。どうにかしてください。
わたしはもうあんな可愛い子を不本意に振りたくないよ!

わたしのシャウトを聞き、大谷さんはけらけらと笑って、縁談云々は大谷さん側で処理してくれると約束してくれた。
ほっと胸をなで下ろす。

「それはそうとして、ぬしに言わねばならぬ事があるのよ。真のとこ言わねばならぬのは三成なのだが」
「、はあ……?どうしたんですか」

大谷さんは疑問符を浮かべるわたしを見下げて、軽い溜息をつく。

「金吾の事は知っておるな?」
「はい」
「徳川が金吾に文を出したという話を小耳に挟んでな、あれは臆病者ゆえ我らを疎んでおる。このままでは金吾が東軍に寝返るやもしれぬ」
「あー……」

ふと脳裏に浮かんだのは、毛利さんに往復ビンタからの全身ぐしゃ踏みをされ、三成には鞘におさめたままの刀でガッツンガッツン殴られる可哀相な金吾の姿だった。
毛利さんのシーンはちょっと笑っちゃったけど三成のとこは笑えなかった。あれ絶対痛い、金吾じゃなくても泣いてる。あとどうでもいいんだけどあん時の三成何言ってんのか聞き取れなくない?

「三成がこれを聞けば怒り狂ったであろうが……今、三成はぬしゆえ、もしやぬしならば金吾を西軍に留めさせることができるのではないかと、われは思ったのよ」
「いや〜……出来るとは言い切れませんけど」

しかし、金吾かー。
そういえばここ最近、鍋というものを食べていない。
鍋っていいよねえ、あったかくて美味しくて、色んなもの食べれて。わたしはみぞれ鍋とミルフィーユ鍋が好きだよ。あと食べた後にお腹壊すけどキムチ鍋も好き。
とか考えてたらめっちゃ鍋食べたくなってきた……。

「……よし。刑部!鍋に、…違った。金吾に会いに行くぞ!」
「……あいわかった。われは何も言わぬでおこ」
「刑部の優しさが温かかったと日記に書いておく」

微妙な顔を向けられた。

が、そんなん気にしてもいられない。
金吾に会って、仲良くなって、一緒に鍋をまぐまぐするぞー!ッシャオラァ!

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