純潔を融かした [46/118]


卑猥注意


女中さんに案内された先でのんびりじっくり一時間くらい温泉を堪能し、宛がわれた客室で晩ご飯も頂いてからあたしは浴衣姿で布団に寝ころんでいた。
なんとはなしに出した影人形の蜘蛛と蝶々で遊びつつ、いっそ真田軍に家出すんのもアリだななんて考える。
まあ佐助がこわいのでそんな考えは即却下なのだけど。

そんなことを考えていたら障子の向こうに人の気配を感じ、あたしはゆるりと布団から身体を起こした。

「朱ちゃん、今大丈夫ー?」
「……ああ、はい」

いやこれハイって返事しちゃダメじゃね?と思うも時既に遅し。
すうっと静かに障子を開けて部屋に入り込んできたのは、お察しの通り佐助だった。その向こうに星明かりも月明かりもない真っ暗な夜空が見えて、なぜか背筋が震える。
佐助は出入り口の方に置いていた空っぽのお膳を一瞬だけ目にし、にこりと笑んであたしの正面に腰を下ろす。
何の用ですかと問いかければ、ちょっとね、と曖昧に返された。

「改めて訊くけど、何で朱ちゃんがここに来たの?」
「……?いや、それはあたしが大谷さんに訊きたいくらいなんだけど…、あたしを使った方が早いからじゃないすか」
「でもわざわざ、同盟の文を渡すために忍を使うなんて、おかしいと思わない?」
「いやだからあたしは忍じゃ、ない、って……、あ、れ?、」

ぐらりと一瞬、視界が揺れる。そのままぱたりと布団に倒れ込んで、ふやけていく思考回路にただただ疑問符を浮かべた。
身体の力が入らない。頭がぼーっとする。なんかからだが、あつい、ような……?

ぼんやりとした視界に、佐助の顔が映った。
にこにことしているのにまったく笑ってない、変な顔。

「朱ちゃん、ほんとは何か別の事、言いつけられてたんじゃないの?例えば武田について探ってくるとかー、それとも大将や俺様の暗殺とか」
「なに、いって」

やばい、本格的に、身体がおかしい。
心臓がどくどくばくばくうるさくて、下腹部の辺りが熱い。頭もぼやけるし、もう腕にも足にもロクな力は入らなかった。動けない。

佐助があたしの上に覆い被さる。数回啄むような口付けを落とされて、その唇はあたしの目尻や、耳たぶや、首筋へとどんどん移動していく。
その度に自分の口から聞いたこともないような声が出て、ますますわけがわからなかった。

「かわいー声」

ぼやける視界で、どうにか佐助を睨み付ける。
佐助は口元だけで笑って、あたしの首筋に吸い付いた。また変な声が出る。
その頃にうわ、と気が付いた。いつの間にか浴衣、はだけてる。

これはもしかしなくても、相当にやばい状況なんじゃないだろうか。

「自軍以外の場所で出された料理、ほいほい食べてちゃダメでしょー?そういう教育、本当に受けてないの?というか薬にも慣らされてないって、ほんとに朱ちゃん忍?」
「だ、から、違うって……っぁ、やだ、」

思わずか弱い声が出て、こんな状況じゃなかったら多分笑ってた。
佐助の手が胸元を這っていて、それが一箇所に当たる度に走る電流のような感覚に、どんどん頭が蕩けていく。
やばい、やばい、さっきからそれしか考えられない。

「……朱ちゃん、初めてでしょ。俺様、いーっぱい気持ち良くしてあげるし、優しくもしてあげる。だから隠してること、全部話して?」
「ひ、ぁ、あっやだ、やだっ……!」

びくんと身体が震えて、頭の中が真っ白になって、わけがわからなかった。
太ももの辺りにぬめり気も感じるし、もうやだ、帰りたい、意味わかんない。涙がぼろぼろこぼれるのに、それでも頭の中は蕩け続けていて、茹だるような気分だった。

苦しい、熱い、苦しい。もうやだ。

「たすけ、て」
「ん、俺様が助けてあげる」

唇を寄せられて、完全に、頭の中が溶けきった。

佐助の手が閉じていた両足を開かせる。
また電流が走るのかなとぼんやり考えながら、もう抵抗も出来ずに、ぶよぶよとした膜の向こうで起きている出来事を眺めているように、あたしは佐助を見つめていた。
まだ苦しさも、熱さも、全然とれない。苦しくて、苦しくて、どうすればいいのかわかんなくてただただ喘ぎながら悶えて泣いた。
暫く経ってなにか太くて硬いのが自分の中に入ってきたのはわかったけれど、それが何なのか、何が起きてるのかはわかんなくて、やっぱり喘ぐことしかできない。

「朱ちゃん、きもちい?」

問いかけの意味も一瞬わかんなくて、下腹部から感じるちょっとの痛みや圧迫感に揺さぶられながら、口からは勝手に答えが漏れ出た。
それが本心だったのかなんて、あたしは、考えたくもない。

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