はたまた必然か [2/118]


お気に入りのワンピースにニットカーデ、ブーツを履いて。
肩にはその格好に不似合いな大きな鞄を提げて。
もっと不似合いなのは、その身体にべっとりとついた赤い血と、利き手に握られた刀だけれど。

そんな二人が、ついさっき戦が終わったばかりの戦場に倒れていた。
肉が腐りゆく臭い、血の臭い、硝煙の臭いが漂う中で、眠るように。ひっそりと。

気を失っただけなのか、それとも死んでしまっているのか、傍目に見てはわからない。
少なくともこのまま誰にも見つけられなかったら、周囲に横たわっている亡骸と同じように、土の養分か虫や獣の餌になっていくのだろう。
しかし二人は、幸運にも人に見つけてもらう事が出来た。


ゆっくりと、確かな足取りで二人に近付くのは、彼女たちと同じく真っ赤に染まった一人の男だった。
彼の後ろからは、宙に浮く輿のような物に座っている男がゆらゆらとついてきている。
血塗れの男はその鋭い双眸を僅かに見開き、また細め、横たわる二人の女の元へ少しずつ近付いていった。
じっとその姿を見つめ、周囲をぐるりと見回し、また二人へ視線を戻す。
その視線は二人の内、背の高い女の方へと縫い止められていた。

「……三成、どうした?それが気になるのか」

輿に乗った男が問う。
三成と呼ばれた男はその言葉に返答をすることはなく、口を真一文字に結んだまま、背の高い女の傍らへしゃがみ込んだ。
手を頸動脈に添え、彼女が生きているのかどうかを確かめる。

指先には静かに、だがしっかりと、脈動の感覚があった。

「刑部、私はこの女を連れ帰る」
「、……それは構わぬが、二人共か?」
「この女だけでいい。後は貴様の好きにしろ」
「……左様か」

刑部と呼ばれた男は、乗っている輿をふわりと浮かせ、背の低い方の女へと近付いた。
脈を確認するよりも早く、すう、と小さな吐息が彼女の口から漏れ、彼は喉を引きつらせて笑う。
三成と呼ばれた男は既に背の高い方の女を抱え上げており、彼はそれをちらりと見やってから、自身の周囲に浮かんでいる珠を使ってもう一方の女を抱えた。

「ぬしが女子に興味を持つとは、メデタキな」
「くだらない事を言うな」

ヒッヒと独特な引き笑いを漏らし、一方は仏頂面でフンと鼻を鳴らし、そうして二人の男は二人の女を抱え、戦場から姿を消した。



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