つける 多分、あたしとフランの2人分ある晩ご飯(超豪華なんだけどこの金持ちめ…肉美味しそう肉)をテーブルの上に置いて、フランはソファーにどさっと沈んだ。 そして、ちょいちょいとあたしを手招く。 それに従ってフランの隣に座ろうとすれば、下から睨み上げられた。 わお、超恐い。 「足下に座れって言ってるんですよー」 「えぇ…」 「ペットでしょー?」 こんのドSが…! なんて思っても逆らえるわけなく。殺されたら嫌だしね…。 大人しくフランの足下に正座したら、くしゃくしゃと頭を撫でられた。 「よくできましたー」 「…喜んで良いのか分からない」 「喜ぶところに決まってるでしょー」 いや、無理でしょ。 確かに頭撫でられるのは気持ちいいしフランの手ぇ温かいなぁ…なんて…、なんかあたしMになるための調教受けてんじゃないのかこれ。 …フラン、恐るべし。 するとフランは徐にポケットに手を突っ込んで、細い紐…いや、首輪?のようなものを取り出した。チョーカーっぽい。 あれ、ちょっ、これ、まさか。 「美遊ー、頭、上に向けてくださいー」 「うわあやっぱりあたし用」 「ペットと言えば首輪でしょー?」 「間違ってないけど間違ってる」 黒い布地のリボン、みたいな感じのそれには、真ん中にリボンの形をした金色のキラキラしてるのと鈴が付いていた。デザインだけを言うのなら、まあ…結構可愛い。 それをあたしに付ける気満々なフラン…。 でもこれ、抵抗したらもっとヤバイもん付けられそうな気がする。 諦めたあたしは、頭を上に向けて首をフランに晒した。 「…、」 「ぐえっ、ちょ、キツイよフラン!」 「潰れたカエルみたいな声出しましたねー」 「カエルなのはフランじゃん…」 「自分からなったわけじゃありませんー」 カチ、とそれ…もういいよ、首輪でいいよ、首輪をあたしに付け終えたフランは、もう一度あたしの頭をふんわりと撫でた。 その手つきがあまりにも優しすぎて顔が熱くなる。 あー…格好良すぎるんだよフラン…! 「じゃ、食べますかー」 「あ、うん」 「はい」 「…え、何」 フランはあたしに向かって、口をあーんと開けて静止した。 え、なんなのこの子…行動が全く読めないんだけど。 あたしがポカーン、とそれを見ていたら、小馬鹿にした視線をあたしに向けて、フランはフォークを手に取った。 既に切り分けられているステーキにフォークを刺して、あたしの口元にずいっと突き付けてくる。 もしかして、これはあれか…俗に言うあーんか。さっき自分で言ったなあたし。 「食え」 「いただきます!」 フランこっええ! 瞳孔開いてましたけど今、なんか背後で黒い物がゴゴゴゴ…って言ってましたけど今! 恥とか全部かなぐり捨ててステーキ肉に食いつく。 ありえないぐらい美味しかった。こんな美味しい肉が世の中にあったのか…。 フランは無言であたしにフォークを渡すと、また口を開いて固まった。 あの、すごいアホ面なんだけど…いやでも可愛い。 「あーん…」 「ん、」 …なんなのこの子の可愛さ、兵器? フラン曰く、ご主人様に食べさせてあげるのもペットの仕事だとか。 …それペットじゃなくてただの召使いじゃね? そうとも言いますねーって言ったフランは、無表情でステーキを飲み込んでいた。 首に付けられた鈴が、ちりん、って小さく鳴った。 (その白い喉に噛み付きたい、なんて) ← → 戻 |