ばれる   


ミーは晩ご飯取りに行ってきますねー、と言い残して、フランはまた部屋を出て行った。
その間に着替えるよう言われたので、さっき渡された服を適当に物色する。

「今更だけど、これは…フランの趣味なのか…?」

黒、白、赤、ピンク、紫。黒が8、9割を締めているそれは、綺麗なレースのあしらわれている…所謂ゴスロリ系の服。
可愛い!とは言ったけど、もちろん可愛いけど、似合うかどうかは別ですよね。
こーいうのはクロームとか着たら可愛いと思うんだけどあたし。あ、見てみたいなソレ。

とにかく着ないと罰ゲームってフランがぼそっと呟いたのを聞いてしまったから、仕方なくあたしは一番地味めな黒のワンピースを手に取った。
制服を脱いでワンピースに腕を通す。
鏡を見たら恐ろしいほど似合わなかった。…まあいいや諦めよう。

「フラン早く帰ってこないかなー」
「どうだろうなー」
「うわっほい!」
「何だよその叫び声」

びっくりした、びっくりして内臓的な何かが口から出てくるかと思った。
部屋の入り口の横、壁にもたれて腕を組んでる金髪の人。
うわー、やっぱり髪型ディーノみたいだ…現代ベルの方が髪型好きだったな、なんてぼんやり思う。…って、そんなことはどうでもいいや。

彼のことをどう、呼ぶべきだろう。
ベルはじっとあたしを見たまま何も喋らない。何しに来たのあなた。

「えーっと…、王子さん?」
「!よくわかったなーお前。まあオレ王子だもんな」

何その理論。
いや…もう王子としか言いようがないかなー、と思って…。
だってほら、冠つけてるしね。
まあ金髪+冠=王子は常識だよね!

「で、何のご用ですか?」
「ああ、お前あのカエルのペットなんだってな」
「…What?」
「何その無駄な発音の良さ」

え、あ、ちょ、まてまて。何ペットって。そんな…あたしいつから動物に成り下がったんだ…!
てかフランまじでSだなおい。
人のことペットて…、そんな素振り見せなかっ…あ、いや、罰とか言ってる時点で結構そんな扱いですね、すみません。

ぽかーんとしてるあたしを面白そうに眺めるベルも、相当なSなんだろうけど。
わざわざフランがあたしのことをペットって言ってたって遠回しに教えてくる辺りが、もうなんか、ドS。

「あ、そーだ。お前名前は」
「…幸矢美遊です」
「ふーん。オレはベルフェゴールな」
「はあ…よろしくです、ベルさん」
「ん。で、お前ペットとか言われていーわけ?」

嬉しくはないですけどと答え、悩むように喉を鳴らしてからあたしはベルに向かって、小さく笑みを向けた。
ベルがきょとん、とする。その反応可愛いな写メりたい。

「まあ、フランなら良いかなー、と。下手したらミジンコ扱いされかねなかったかもしれませんし…。それにペットなら、ちゃんと世話してくれるってことですよねー、ありがたい限りです」
「…まじで?」
「ちょっと、引かないでくださいよ。そーいう趣味なわけじゃありませんからね」
「お前Mなのか…」
「違いますって!」

「…、何してんですかー」
「うひょぅわっ!」
「だから何なんだよお前のその叫び声」

びっくりした、またびっくりさせられた。何なんだはこっちの台詞だ。あたしを驚かしても何も出ませんよ!

扉を開いて現れたフランは、すごく、ご機嫌斜めで。
あ、ベルが勝手にフランの部屋に入ったからかな…。でもそれあたしに責任ないよね、うん大丈夫。

「ふざけてんですかー」
「えぇえ何であたし」
「ミーの部屋に勝手に堕王子入れないでくれますー?」
「不可能じゃね…」
「飼い主の言いつけ守れないなんて駄目なペットですねー。てゆーかベルセンパイ勝手にバラさないでくれますかー、一応隠してたのによー」
「ししっ、知らねーよ。だってオレ王子だもん」
「…とにかく、美遊はさっさとこいつから離れてくださいー」
「ウィッス」

フランの顔が、怖かった。
ベルは楽しそうに笑いながら部屋を出て行って、ちょっ今のフランとあたしを二人っきりにすんなよバカ王子!と思ったけど、フランの顔を見たら何も言えなくてうわああああ。帰りたい。

「バレたからにはー、ちゃんとペットらしく過ごして貰いましょうかねー」

ニヤリと笑う、フランは確実にドS。
しかも腹黒のオプション付きだ。やだもう。


(ミーが気に入るペットなんて珍しいんですよー)


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