わらう   


「ボスから許可貰いましたんでー、今日からここに住んでくださいねー」
「あ、はい…」
「よろしくお願いしますー」
「こちらこそ…?」
「だから何で疑問系なんですかー」

部屋に戻ってきたフランは、それはそれは楽しそうだった。何よりですけど、ちょっと怖い。
というか、ここに住むって…

「フラン、…さんの部屋で、ってことですか?」
「そうですよー」
「えぇえ」
「文句あるんですかー?」

またナイフ。だから何でベルのナイフもってんだフラン。
刺された奴か。刺された奴をパクったのか。折ったり捨てたりに限らずベルのナイフ盗っちゃうのか。どんだけベル嫌いなんだこの子。

ないです、と焦りながら答えれば、満足そうにフランは笑った。可愛いなぁもう…。

ぼーっとフランを眺めていたら、目を逸らされた。ですよねー。
と、いきなり何か布の固まりを投げつけられる。
よく見てみれば、それは服で。

「ミーが用意してやったんですからー、ちゃんと着てくださいねー」
「え、わ、うわわ、可愛い!ありがとうフラン!…っと、フランさん」

うわあ興奮した所為でフランのこと呼び捨てにしちゃった!
怖いな、怒ってないかな、眉間に皺寄ってんだけど、ちょ、呼び捨てにしてごめんなさいフラン様!

背中を嫌な汗が流れていくのを感じながら、どうしようどうしようってぐるぐる考えていたら、フランが口元を押さえて後ろを向いた。
よく見れば、耳が赤くなってる。…?この部屋そんなに暑いかな。
だってまさか、フランに限ってあたしの言葉に照れるなんて事はないでしょ!ありえないありえない。
少し経ってから、フランはごほん!と咳払いをひとつしてあたしの方に向き直った。

「フランで構わないですよー。むしろそう呼べ」
「え」
「敬語も使わないでくださいねー。なんか嫌味に聞こえるんでー」
「それフランさんのことじゃ…」
「何か言いましたかー?」

ちろりと睨まれる。

「口を開いてすらないです!」
「じゃあ、敬語使ったりミーのことフランさんって呼んだら罰与えますんでー」

にやりと笑う、フラン。
これは怖い。
なんか、あたし、もしかしたら一番やっかいな人のところに来ちゃったんじゃないかな…。
てゆーか罰って何…超恐いんだけど。

「お返事はー?」
「任せろフラン」
「えらくいきなり上から目線ですねー…」
「開き直ってみた結果がこれだよ!」
「あ、馬鹿なんですねわかりましたー」
「…泣いていい?」
「啼くのは許可しますー」
「遠慮しますー」

まあ、一応…仲良くはやっていけそう?なのかな。

目が合ったフランに、あたしはふにゃ、と笑いかけた。
フランは相変わらず、どこか妖しく笑っていた。


(それすらも格好良く見える、…末期だな)


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