静かに眠る   


フランが病室に来る前の話



青白い肌にはまるで生気が無く、触れたら壊れてしまうんじゃないかと思いながらも、動く手を止めることはできなかった。
そっと、頬に触れる。

温か…い。

「…っ、美遊…」


腕に繋がれた点滴の針ですら痛々しい。

その腕に走る注射痕も、切られた痕も、すべて俺があのとき美遊を守れなかったからだと思い、自分のあまりの愚かさを呪った。

ぎゅうと、美遊の俺より小さい手を握る。

「…早く、起きろ…よ」
「……」
「てめぇは、フランの隣でへらへら笑ってんのが、仕事だろぉが…」

さらりと柔らかな黒髪を梳いて、その額に口付けた。
美遊の目蓋は開かない。
ぴくりとも動かないその姿に、きつく唇を噛んで、…ゆっくりと手を離した。


「守ってやれなくて…ごめん、なぁ」


(その言葉も想いも、君には届かないのだろうけど)


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -