xxx ※bad end ピー、ピー、と、機械の音が聞こえる。 それと同時に、僅かにだけど、呼吸音も聞こえてくる。 その申し訳程度に聞こえてくる呼吸音がむなしくて、やるせなくて、何度ここにある機械を壊してやろうかと思ったことかと、考えながらぼんやりと横たわる彼女を眺めた。 ボスがつれてきた。ここに。1枚の手紙と一緒に。 ヴァリアー邸の前に倒れていたって。 手紙にはただ一文、「壊れた玩具に興味は無いんだ」とだけ書かれていて、最後につけられた星マークが嫌みったらしくて、すぐにびりびりに破いて捨てた。 美遊は、起きない。 目を覚まさない。声を出さない。動かない。 全てを拒絶したんだ。 ミルフィオーレの奴らに身体も、心も、ボロボロにされて。 腕にはいくつもの針の後。 身体のいたるところにある、切り傷。 何が原因でついたのかすらわからないような痕が、いくつも。 こんな痛々しい美遊を、ミーは知らない。 ただずっと目を瞑って、呼吸だけをしている壊れた人形のような美遊を、ミーは知らない。 記憶を失っててもいい。半狂乱になっててもいい。せめて起きてくれたら。 嫌なことなんて全部ミーが幻術で忘れさせてあげるのに。幻術で、もうミー以外見られないようにするのに。 せめて起きてくれたら。 起きてくれたら、幻術で。 この装置を外せば、ショックで目を覚ましたりしないだろうか。 身体を思い切り揺さぶれば、驚いて起きたりしないだろうか。 でもミーが触れるにはあまりにも、この、ベッドに横たわる身体は、脆い。 点滴だけで過ごしているせいか身体はどんどん痩せていく。 もとから細かった美遊が、どんどん細く、小さく、壊れやすくなっていく。 目を覚まさない美遊は幸せなのか。 どこか夢の世界で、幸せに過ごしているのか。 ミーのいない、世界で。 なのにミーは美遊の眠り続ける世界で生きなきゃいけないんですか。 美遊が笑いかけても、触れてもくれない世界で。 ミーだけ、1人ぼっちで。 そんなの惨すぎる。 ミーはもう、美遊がいないと生きてけないんですよ。 美遊がいない世界で生きてたってなんも面白くない。なにも、楽しくなんかない。 ここにいる、意味がない。 美遊、起きて。起きてください。 どんな状態でもいい。せめて目を覚まして。 美遊の見たくない世界なら全部無かったことにしてあげますから。 美遊が嫌なモノは全部消してあげますから。 だから、だから、だから。 「ミーの世界に、戻ってきて、くださいっー…」 声は届かない。 その想いは叶わない。 彼女は世界を拒絶した。 もう目を覚まさない。 あなたを呼ぶことはない。 あなたに触れることはない。 あなたと彼女が関わる世界はあり得ない。 世の中そんなに、甘くない。 ← → 戻 |