できあい   




ぱっ、と目を覚ました。
視界に映るのはエメラルドグリーン。そして赤い空。

ここがどこなのか、何でここにいるのか、なにもかもがわからなくて、自分の口から叫び声が上がっていることにも気付かなくて、ただただ、全身を震わす恐怖に怯えていた。

「――!…、!」

誰かがあたしを呼んでる。誰が。白蘭。それとも他のミルフィオーレの人間?また実験をするの?またあたしに針を刺すの?またあたしを切るの?いやだよ、もう痛いのは嫌、嫌、嫌…!全部いや、もうあたしに構わないであたしに触れないであたしに話しかけないで!助けて誰か、誰でもいいから助けて、あたしをこんなとこから連れ出して、お願い、誰か、助けて、誰か…――フラン。

「…、――美遊!!」
「っ!、ふら、ん…?」
「しっかりしてください美遊、ここにはミー以外いません、美遊を傷つける人間なんてもういません、だから、だから」
「ふ、らん…ふらん…?…フラン、だ…」
「、フランです。ミーはここにいますー。美遊のそばにいます、もう絶対、離れませんから、美遊をずっと守りますから、美遊、美遊…っ」

ああ、さっき見えたエメラルドグリーンは、フランの瞳と、髪の色だ。綺麗なエメラルドグリーン。あの、白ばかりの世界には無かった色。

「フラン…ごめん、ごめんね、いっぱい心配かけてごめん。勝手にいなくなってごめん。もういなくならないから、フランのそばにずっといるから、」
「美遊、美遊っ…ミーこそごめんなさいー、美遊を守れなくて、ごめんなさ…」
「ううん、ありがとう、あたしが帰ってくるの待っててくれて、ねえ…フラン」

ぎゅうと、フランの背中に腕を回す。

あたたかい、フランの温度。
湿っていく、あたしの肩。
フランはほんとに、泣き虫だなあ。
って、あたしも泣いてるんだけど。


ゆっくりと身体を離して、フランと目を合わせる。
いつぶりだろう。こんなに真っ直ぐ、フランの目を見るの。

フランにまた会えた。フランにまた触れることができた。フランの声を聴けた。フランとまた、今度こそ、ずっと一緒にいられる。


「――…ただいま」
「…っおかえりなさい、美遊」

今度はフランから、ぎゅうと抱き締められる。

この温もりを、もう離さない。
大好きなフランといられるなら、他には何もいらないから、だから。

「フラン、大好き。大好きだよ」
「ミーも、美遊が大好きですー」


どうかいつまでも、あなたに溺れさせて。



溺愛

(あなたに)(君に)
( 溺れていく )



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