こいねがう   




美遊がミーの前から、この世界から消えて1週間が経った。
白蘭が美遊に渡したリングが、死ぬ気の炎を利用した転送システムである可能性を考えて、ヴァリアーのヒラ達が今世界中で美遊を探している。
でもきっと、美遊は見つからないだろう。

ロン毛隊長は今も医務室で治療中、昨日意識は戻ったらしい。
ミルフィオーレの仮アジトから1人で帰ってきたミーは、堕王子に殴られルッス先輩にはビンタを食らい散々だった。
でも、それでも足りない。
何でミーはあの時、美遊を引き留められなかったのだろう。
白蘭と美遊の会話は聞いていた。
こっちに戻ってきた美遊が、白蘭の研究材料にされるなんてたまらない。
せめてミーが美遊の世界に行けたら、なんて…。

「美遊…」

任務に就く気も起きず、今のミーに任務を任せても失敗するのが目に見えてるんだろうボスはミーに1ヶ月も休暇をくれた。
カエル帽子を投げ捨てて、部屋のベッドに沈む。
かすかに香る美遊の匂いに、鼻の奥がツンとした。

…だいたい、美遊も美遊だ。
ミーに何も話さないで、1人で勝手に全部決めて、勝手に…帰って。

「戻ってきたら、お仕置き決定ですー…」

ぼそりと口にした言葉。
美遊がいたら、「お仕置きはやだよ!?」って驚いたような、呆れたような表情で答えてくれるだろうに、美遊の声はどこからも聞こえてこない。
ミーの頭の中でくるくる回る美遊との日々に、目眩を感じた。
美遊の存在が、もしかしたら最初から幻覚だったんじゃないかとすら思えてくる。

でも、やっぱり、美遊と過ごした時間は本物なんだ。
自分の左手の薬指にはめられている指輪が、なによりの証拠。



美遊、美遊は…元の世界に戻っても、ちゃんとこの指輪つけてくれてますかー?

「早く帰って来てくださいよ、美遊のばかやろー」

枕を、ぼふんと壁に向かって投げ飛ばした。


 (溺れ死ぬほどに愛した彼女は、もうこの世界にはいない)


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