よう   



任務から帰ってきて、報告書を出してから部屋に入れば、

「おひゃえりー、ふらんー」

美遊が酔っぱらっていた。
え、何でですかー…。


真っ赤な顔にとろんとした目。確実に酔っている。
机の上に目を向ければ、それなりに高級なワインとコップがふたつ。
片方のコップだけにワインが注がれた痕跡があった。恐らくこのコップで美遊がワインを飲んだんだろう。けど、ミーの部屋にワインは無い、はず。

よくよく見てみればワインの下にメモが挟んであった。

[お礼は牛乳一生分でいいぜ]

数瞬置いて、メモをびりびりに破り捨てる。
あんのクソ堕王子が…!つーか何勝手にミーの部屋入ってんだあの野郎…。

美遊は酔っぱらった顔のまま、ミーの腰に腕を回して擦り寄ってきている。
思えば…美遊から抱き付いてくるのって珍しくないですかー?
まあこの前嫉妬してミーに抱き付いてきた美遊は可愛かったですけど…っじゃなくて。

「ふりゃんどしたのー?」
「…ミーの名前はフランですー」
「だからふりゃんって言ってるじゃんー」

だめだこの人。
呂律すら回って無いじゃないですかー、結局フランって言えてないしー。

でも赤い顔で擦り寄ってくる美遊は、まあ正直めちゃくちゃえろいんですけどー…いやでも酔ってる相手を襲うほどミーガキじゃないですからー、うん。
とりあえず後で堕王子殺しに行こう。

「ふらんー?」
「あー…何ですかー?」
「んー、好きぃ」
「……、」

ふにゃりと笑った美遊の笑顔が不意打ちすぎて思わず、ぼぼぼっと顔に熱が集まった。
「にゃはー、ふらんかおまっかっかー」って子供みたいに笑う美遊のほっぺをむにーっと引っ張りながら、顔を背けた。
酔ってるとはいえこんな顔はちょっと…見られたくないですしー…。

このままだとミーが保ちそうにない。
酔ってるならそのまま早く寝てくれないだろうか…そう思って顔の熱が引き出した頃に、美遊に視線を戻した。

「ふらんー」
「今度は何ですか…」
「えっと、…」
「…?」

美遊は一旦黙ったかと思うと、くぁ…と小さくあくびをした。
チャンスとばかりに美遊を抱き上げ、ベッドに連れて行く。
ぽすんと美遊をベッドに落としてシーツを掛ければ、とろんとした目が更に眠そうに揺れた。

「眠いなら寝ていいですよー」
「うん…あのねふらんー」
「はいー?」
「あたま撫でて欲しいー」
「…わかりましたー」

ベッドの端に座って、くしゃりと美遊の頭を軽く撫でる。
そのままさらさらの髪を感じながら、頭を撫で続けた。
いくらか経った頃、すーすーと美遊の寝息が聞こえてくる。
自然と頬が緩んでいたことに気付いて、小さく自嘲の笑みを浮かべた。

シャワーでも浴びてから、ミーも寝ますかー。


 (平和で優しい時間をくれた君が愛しくて)

――
フランに甘えて、頭を撫でてもらいたいってリクを頂いたので。
リクくださった方ありがとうございました!


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