する   



なんかずーっとふわふわした世界にいると思ってたら、はたと意識が戻った。
どこだここ。
考えるよりも数瞬早く鼻についた、鉄臭さと生臭さ。

あ、フランに手刀落とされてー…多分任務に連れてこられたのかな…。
ほんっとにロクなことしないなあの子。

「あ、美遊ー起きましたかー」
「起きましたかー、じゃないわバカガエル」
「安心してくださいー美遊はミーがちゃんと守りますんでー」
「うん、そう言うなら部屋に置いてきて欲しかったな!」
「監禁プレイが好きなんですかー?美遊はMですねー」
「ねえフランの耳って飾り?」
「は?馬鹿ですかー?」

……このカエルまじ一辺死ねばいいのに。

もういいや言うだけ無駄だ、そう悟ったあたしは視線だけを周囲に向けた。

どこかの屋敷の一室っぽい感じ。
もう任務は粗方終わったのかな…、だといいけど。

不意に、視界に入った、倒れた人達の山。

見た目はそんなグロくないけど、明らかに生きてはいない人達の姿を見たあたしの手は、無意識にフランの隊服を掴んでいた。
フランの身体がぴくりと揺れる。
人の死体なんて、初めて見た、それも、こんな…たくさん。
カタカタと震えるあたしを見下げて、フランはすっとあたしの背中に腕を回してきた。

「美遊ー?」
「な、に」
「美遊はミーが恐いですかー?人を沢山殺してる、ミーが」
「フラン、が…?」
「ミーが恐い、ですかー?」

そう問いかけるフランの視線は、あたしだけにじっと向いていて。
でもその瞳は不安げに揺れていた。

こわい?
…そりゃもちろん、恐いに決まってる。
きっとあたしなんか赤子の手を捻るくらい簡単に殺されちゃう。
けど、でも。

「恐いけど、フランだから、平気だよ」
「、…え?」
「フランが好きなことに、変わりはない」
「美遊ーっ」
「おぅわっ!」

ずしりと体重をかけてきたフラン。
もちろんあたしがそれに耐えきれるはずなく、どたーん!と地面に2人してひっくり返った。
あたしの視界には、フランと、天井。

フランの瞳が、じ、とあたしを見つめた。

「フラ…ン?」
「美遊、目ー閉じてー」
「え、ちょ」

触れた、その柔らかな温もりに、愛しさが溢れて。
つい、あたしはフランの首に腕を絡めた。


 (それが初めてのキスでした)


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