かすむ   



多分部下の人に呼び出されて部屋から居なくなったフランは、10分ほどしてからすごい黒いオーラを背中に纏ってしょぼーんとしながら帰ってきた。
というか、拗ねてる?この子。

「美遊、ミー、すっごく嫌ですけどー、任務行ってきますねー」
「あー、そろそろ怒られたんだ?」
「はいー、見てくださいコレ、燭台投げつけられましたー」
「わ、血出てる」

フランがカエル帽子を脱いで見せてくれた、左側のおでこのちょっと上ら辺から、ひとしずくの血液。
部屋にある救急箱を持ってきて、それから消毒液とガーゼを取り出してフランの頭に貼っ付ければ、フランはにこにことそれを享受していた。
消毒液染みないのかこいつ。

「奥さんみたいですねー美遊」
「何言ってんだ」
「美遊はきっと良い奥さんになると思うんですよー。まあ子供はミーに似て可愛い子になってくれませんと困りますけどねー」
「あ、なんだろうこの子殴りたい」
「3倍でヤり返しますけどー」
「やっぱやめとく」

ほい、とフランにカエル帽子をかぶせてあげれば、眉間に皺を寄せながらもソファーから立ち上がった。
フランが任務ってことは、久々にリア姉さんに会えるのかな、楽しみ!
また何か美味しい物の作り方教えて貰おう。

そう思いながらフランの後をついて行っていたら、フランがいきなりくるりと振り返った。

「、フラン?」
「あのオカマのとこに行くとー、またアホロン毛に会いかねませんからねー…」
「(…酷い言い様だな)」
「美遊」
「何?」
「ごめんー」
「は、痛っ!」

すとん、と首の後ろに鋭い衝撃を受けて、あたしの視界はかすんでいった。
最後に映ったフランの顔は、それはそれは楽しそうで。

あー、これはろくな事になんないな。
そんなことを冷静に考えながら、意識はブラックアウトした。


 (大丈夫ですよー美遊はミーが守りますからー)


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