はなす や、もう、ほんっと、なんなんですかね。 あの無理矢理犯された日からフランは前以上にべったべたで、おまえいい加減任務行けよって思うくらい、かなり長い間任務にも行っていない。 いいのかそれで。社会人がそれで良いのか。というかボスは何も言わないんですね。 いや、言ってたとしても知らないけど。 おかげでリア姉さんにもあれ以来会ってない。 もちろんスクアーロにもなんだけど…スクアーロの名前出したら、またフランがキレそうなんで。 「フランさ、任務行かなくて大丈夫なの?」 「報酬が出ないだけですからー」 「でもほら、仕事なら上司とか怒るんじゃないの?この前言ってた怒りんぼのボスさんと、か、」 そこまで言ったところで、フランの鋭い視線があたしを射抜いた。 うっわ、恐っ。 「ミーの前で他の男の名前呼ばないで貰えますかー?」 「男かどうかなんて知らないよ…」 聞いてないよねあたし、ボスが男かどうかなんて。 え、ああザンザスが女だったら引くけど!色んな意味で恐すぎるわ…。 と、まあこんな感じで、フランはあたしがフラン以外の名前を呼ぶことを拒みだした。 ほんの一瞬でもフランの視界から外れたら、すごい勢いで抱き付いてくるし、なんかそれは、嫌じゃないけど…。 普通じゃ、ない。 それと、あの日以来変わったことがもうひとつ。 「美遊ー好きですー」 「あ、はい、ありがとう」 「美遊はミーのこと好きですかー?」 「え、あ、うん」 執拗に、好きだ好きだと言ってくるようになった。 まさか冗談、あのフランがあたしなんかを好きって、ないでしょ? そう思ったけど、でもそう言うフランの瞳は真面目そのもので、むしろ、何かの狂気すら揺らいでいて。 否定しようものなら、この前以上に、痛くて恐い思いをするんじゃないか。 決して嫌なわけじゃない。 勿論嬉しいし、あたしだって、こんな目には遭ってるけど、フランが好き。 そこまで恋愛に鈍いわけじゃないからそれぐらいちゃんと理解できる。 フランが好き。 だけど、このフランは、いつだってどこか危うい。 「ミーのこと、好きですかー?」 「好き、だよ」 「ミーは美遊のこと愛してますー!」 「…うん、あたしも」 だって何度も繰り返すフランの瞳は、時々虚ろなんだ。 夢を見ているような、何か、何かの恐怖に怯えているような、どこかに、…そう。 まるで、溺れているときのように。 (ミーが溺れてるんだから美遊も溺れてくれなきゃフェアじゃない) ← → 戻 |