かわる   



うっすらと目を開けば、ぼんやりとした視界にフランと、壁が映った。
昨日の恐怖心が蘇ってきて、反射的に逃げようとする。そこで、腰が鈍く、響くように痛んだ。
結局ずるずるとベッドに沈みこんだあたしを見て、起きていたのかフランが心配そうな視線を向けてくる。

フランの所為で、こんなに痛いのに。
なんでそんな、悲しそうなの。

「美遊、痛いですかー?」
「…、当然、じゃん」
「…良かったですー」
「何が!」

ついカッとしちゃったあたしは、フランの足に自分の膝を勢いよくぶつけた。
い゙っ!って足を押さえるフランは「違、違いますー」なんてあたしに擦り寄ってくる。
なんなの、この子…ほんと意味分かんない。

「もう、口聞いてもらえない、かと思って、だから…返事してくれて、良かったですー、って」
「っ…」

途切れ途切れにそう言うフランは、今にも泣き出しそうで。
なにこのあたしが泣かしてるみたいな雰囲気…。
元はと言えばフランが悪いんだよね?え?あたし何も悪いことしてないよね!
いきなりフランがあたしを、あた、し…に、…うわあああ!!う、うわー!わー!恥ずかしい何だこれ!あたし、フランに犯され…うわあああ!

恐いとか恐いとか恐いとかあるけど!それ以前にまず恥ずかしい!
やばい誰か穴持ってきて…すぐ入って埋めるから。穴があったら更に深く掘って埋まりたい!

「…美遊?やっぱり、怒ってますー?」
「当たり前、じゃん…フランの馬鹿」
「う、だって、美遊が悪いんですよー」
「は!?」

恥ずかしさのあまりシーツに顔を埋めていたのに、フランの発言につい顔を思い切り上げてしまった。
ゴッ、と鈍い音と共に、フランの痛がる顔。
あ、もしかして頭が顎にクリティカルヒットしちゃった?うん、あたしもかなり痛い。
ごめんフラン。
でも昨日のあたしの方が100倍痛かったから謝らないよ!

「だって美遊が、スクアーロ先輩のこと話すときにー、すごく可愛く笑うからー」
「ちょ、…は?」
「アホロン毛隊長なんかを想って笑ってると思ったらー、なんか、むかついちゃったんですー」
「意味、わかん…ない」

なに、それ。

あたしがスクアーロのこと話すときに笑ってたから?いやだってスクアーロ綺麗だったもん。
だからむかついた…って、え、あれ…。


なに、喜んでんだ自分。


もしかしてフラン嫉妬してくれたのかなーとかって、あたし昨日無理矢理犯されたんだぞ!このカエルに!
すっごく痛かったし恐かった、のに!

「…バカフラン、すごく痛くて、恐かったんだから」
「だからーごめんなさいって言ってるじゃないですかー」
「いや初めて聞いたけど!」
「まあ美遊もよがってましたしーおあいこですよねー」
「ちょ、さっきまでの可愛いフランは何処行ったの!」
「ミーはいつだって可愛いですからー」

あたしの背中に腕を回してきて、笑うフランからはもうなんか、Sだこいつ的な雰囲気しか感じられない。
あれ、さっきの幻覚かな。さっきの泣きそうな可愛いフランは幻覚だったのかなアレー?

「美遊、許してくれますよねー?」
「……、」

でも、あたしを見上げるフランの目には、適わなくて。

「今日ずっと、腰さすっててくれるなら」
「お安いご用ですー」
「っあ、ちょ、手つきがエロいんだって馬鹿!」


 (つまりあたしはこのカエルに弱いんだ)


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