くるう 「今日、スクアーロさんに会ったんだ」 「…はい?」 「いやだから、スクアーロさん」 まさか美遊の口から、あのロン毛隊長の名前が出てくるとは思わなかったミーは、思わず呆然として手に持っていた本を落としてしまった。 何してんの?なんて笑いながら本を拾ってくれる美遊にお礼を言うこともままならず、ただただ思考に耽る。 いつ、どこで。 いつ…ミーが任務に言ってる間しかないですよねー。 どこで…ルッス先輩の部屋で、だろう。 偶然訪れたスクアーロ先輩に会ったとか、そんな感じじゃないんですかー? 「綺麗だよね、あの人」 そう言って笑う美遊の笑顔、に、世界が凍りついた気がした。 それ…は、その笑顔は、あんなアホの先輩に、向けてんですかー? だったらミー、許しませんけどー。 隣で、頭に疑問符を浮かべている美遊の右手首を、みしりと軋むくらい強く握った。 「痛っ、フラン?」 「そうやって、スクアーロ先輩のことも呼んだんですかー?」 「何言って、」 「飼い主以外に媚び売るなんて、駄目なペットですねー」 「ちょっと、フラン、どうし…」 「躾、しなきゃー」 「や、ちょ、やだっ!」 じわり、瞳に涙を浮かべる美遊に、背筋がゾクゾクした。 やっぱミーはSですねー。 笑ってる美遊も見た、怒ってる美遊も見た、恥ずかしがってる美遊も見た。 となれば、残るは泣いてる美遊の姿。 「ミー以外見ないように調教しますー」 「フラ、ン?冗談…だよね、顔、怖…いよ」 「冗談なんて言いませんー」 「ひ、あっ」 ぺろりと白い喉を舐めれば、びくりと美遊の身体が震えた。 この前弱いと知った脇腹を撫で上げれば、ふるると震えて鳥肌を立たせる。 ぎゅっと瞑った瞳からは涙が零れてきていて、真っ赤な顔は酷く扇情的だった。 美遊、えろすぎですー。 どれだけミーを煽れば気が済むんですかー。 「やめ、フラン…っ!」 「やめませんよー、ペットの躾をするのが飼い主の仕事ですからー」 「いや、だっ…」 泣いてよがりミーに縋り付く美遊。 そうやって、もっと、奥深くまで、ミーだけを求めるようになればいい。 ミー以外求めないようになればいい。 「美遊の世界は、ミーの傍だけですよー」 印を刻みながら囁けば、美遊は虚ろな瞳にミーを映して、意識を失った。 (そう言う貴方は泣きそうで、恐くて堪らないのに愛しいと感じたあたしは、馬鹿ですか?) ← → 戻 |