かんじる   



「あら大変!茶葉が切れてたわぁ…取ってくるから待っててちょうだい!」
「はーい」

今日もフランは任務で、いってらーいってきまーって見送ったあと、部屋に迎えに来てくれたリア姉さんと一緒にティータイムを過ごす、予定だった。
ところが部屋の茶葉が切れていたらしく、どこかに取りに行ったリア姉さんをひとりぽつーんと待つことに。
暇だなあ早く帰ってこないかなあリア姉さん。

そう思いながら、椅子をゆらゆら揺らして待っていたら、ばんっ!といきなりドアが開いた。

ガッタン!
「ゔお゙ぉいルッスーリア!…って、ゔお゙おぉい!?」
「いったぁー…」

ビックリしてひっくり返った椅子ごと、あたしは床に倒れ込んだ。
頭打った、思いっきり頭打った。

てゆーかこの声スクアーロですねはじめましてー!
第一印象が椅子とこけた女とか最悪すぎる!!

「だ、大丈夫かぁ?!」
「なんと、か」

なんとスクアーロはあたしに近付いてきたと思ったら、手を引っ張って起きあがらせてくれた。
優しい!あたし今なんか感動した!

立ち上がってお礼を言えば、スクアーロはじっとあたしを見下ろして黙り込んだ。
なんなの、此処にいる人はみんなあたしがそんなに珍しいか!
普通のあたしがそんなに珍しいのか!…まあ、そうなんだろうけど。

「お前、誰だぁ?」
「あ、フランのペットにされた幸矢美遊です、はじめまして」
「お゙、おう…、俺はスクアーロだぁ」
「スクアーロ、さん…。あ、リア姉さんなら何処かに茶葉を取りに行きましたよ」
「まじかよぉ…めんどくせえ」

そう言いながら、スクアーロがふわりと髪を掻き上げた時の動作に、思わず見とれた。
すっごく綺麗だなこの人…、なんか、触っちゃいけないとすら思える綺麗さだ。
今度はあたしがじぃっとスクアーロを眺めていたら、困惑気味の視線を落とされた。すみません。

「何か付いてるかぁ?」
「え?いや…、綺麗だなぁと、思って」
「はあ゙ぁ!?」
「すっ、すみません!」

怖っ、声デカっ。

「あ、や、悪い」
「いえ…」

早くリア姉さん帰ってこないかな、ちょっと、居心地悪い雰囲気がっつーか空気が重い。
ふと下げていた視線をスクアーロに向ければ、ぱちりと目が合った。スクアーロの顔が真っ赤に染まる。
この人三十路過ぎてるよね?可愛いなあ…。
いやでも可愛い、っていうか、なんか微笑ましい。

気付いたらあたしは、ほぼ無意識に、スクアーロの髪に手を滑らせていた。
うわ、有り得ないくらいさらっさらなんだけど。

「な、に、して…」
「羨ましいです」
「、は?」
「さらさらで綺麗、あたしなんか先の方傷みまくってんのに」
「…そうかぁ?」

言いながら、スクアーロの手があたしの髪に伸びた。
驚いて、スクアーロの髪から手を離す。
あたしの髪をまじまじと見るスクアーロに、なんか、顔の熱がうわああああ!


がちゃりと開いたドアの向こうに、リア姉さんの姿が見えた瞬間、あたしはスクアーロから離れて猛ダッシュでリア姉さんに駆け寄った。

「あらスクアーロ、来てたの?」
「お゙、う」
「どうしたの2人とも、顔真っ赤よ」
「き、気のせいじゃないかな!」
「き、気のせいだろぉ!」

用事が何だったのかは知らないけど、スクアーロはリア姉さんと一言二言交わしてから、さっさと部屋を出て行った。

スクアーロのあまりの綺麗さに、あたし、完敗です。


 (無意識に、こいつが欲しいと感じた)


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