のむ   



どんなに嫌がったって、仕方ない。
フランはまたすっごく嫌そうな顔をして任務に行った。
けど今回は、少し違う。

「美遊も連れて行きますー」
「は!?ちょ、やだよあたし!」
「勝手に消えられたら困りますからー」
「消えないって!リングもちゃんと持ってるし!」

あたしから手を離さないフランは、無理矢理あたしを俵担ぎして(せめて姫抱きとかさぁ…他に持ち方あるだろ)、廊下まで出ていた。
全力で嫌がるあたし、無理矢理連れて行こうとするフラン。

任務に連れて行かれるって事は、つまり人が死ぬところに出会わさなきゃいけないってことで、もちろんあたしはそんなの見たくない。
それに万が一にもあたしが居るせいでフランに何かあったら…。そう思っただけで身震いした。
だめだめだめだ、そんなことになったらあたし自殺しちゃう。

「あらぁーん?フランちゃんじゃなーい、どうしたのぉ?」
「ゲ、オカマセンパイ」
「ゲ、とは何よ失礼ね!あら?じゃあそっちの子は…」

ちょうど後ろ向いてて顔見えない!顔見えないけど!この声と喋り方は、ルッスーリアだ!
そう思ってジタバタ暴れてみたら、フランが渋々あたしを下ろしてくれた。
軽くテンションを上げながら、ルッスーリアに身体を向ける。

予想以上にゴツかった。

「まあ!本当に普通の子ねぇ」
「え、ありがとうございます…?」
「普通すぎて珍しいわぁー!」
「…あ、そうだ、ルッス先輩、美遊のこと見といてもらえませんかー?ミーが任務行ってるあいだ」
「え?」
「全然問題無いわよ!ちょうどティータイムの話し相手が欲しかったの」

ちょっと待って話しの流れが速すぎてついて行けないんだけど、どういうこっちゃ。

…うん、つまり、フランが任務行ってるあいだはルッスーリアがあたしを監視しとくらしい。
フラン曰く「ルッス先輩は心は女ですからねーキモイですけどー。だから心配ないですしー」とのこと。
ルッスーリアもルッスーリアで結構ノリノリだった。
まあ、あたしルッスーリア好きだから嬉しいけどさ。

「じゃあフランちゃん、この子預かるわね!」
「よろしくお願いしますー」
「お、お願いします」
「美遊、ちゃんと良い子にしててくださいねー」
「あたしは何歳児だ。…いってらっしゃいフラン、気を付けてね」
「…なんか新婚さんみたいですー」

このカエルなんてことを。

「まあ!フランちゃんってば大胆っ」
「早く行けバカガエル!」
「はいはい、いってきますよマイハニー」
「誰がマイハニーだ」

速すぎてあたしの目に映らないくらい、一瞬でいなくなったフランを見送って、ルッスーリアにあらためて向き直った。
にこりと笑ってからお辞儀する。

「幸矢美遊です、フランが居ない間よろしくお願いします、ルッスーリアさん」
「美遊ね、礼儀正しい子は好きよ!私のことは適当に呼んでちょーだい」

嬉しそうなルッスーリアを見て、安心した。
良かった、そこまで迷惑になってるわけじゃないみたい。
…本当に、只単に話し相手が欲しかっただけなのかもしれないけど。

「じゃあ…リア姉さんって呼ばせてもらって、いいですか?」
「ま!可愛い呼び方」

ぱんっ、と手を叩くルッスーリア、もといリア姉さんの仕草は可愛かった。…仕草は。

「それじゃ、紅茶でも飲みましょう」
「はい!」


 (普通に惹かれる暗殺者)


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