広島から我が家へ帰ってきて、ほっと一息。
旅行も良いけどやっぱり自分の家が一番落ち着くな、なんて荷物を片付けながら考える。
約二日間人のいなかった室内は熱気に満ちていたけれど、それも窓を開けて空気を入れ換えれば、少しマシになった気がした。

元就さんは帰りの駅で購入したもみじまんじゅうを、どこか幸せそうに食べながらテレビを見ている。
もみじまんじゅう、気に入ったのかな。美味しいもんね、あれ。
私は友達へのお土産をまとめ、自分用のお土産をばらしていく。
ちら、と視界に入ったミサンガに、思わず笑みがこぼれた。

「……なにを一人で笑っておる」
「あ、いえ、……なんだか、嬉しくて」

ほんの一ヶ月前に現れた元就さんと、こんなに仲良くなれて、好きだって言ってもらえて、自分もそう想えて、ふれあえて。一緒に旅行なんか出来たりして。
それももう、残り一週間も無いけれど。
それでもやっぱり、幸せだと……恵まれていると思った。

「私、元就さんに会えて、幸せです」
「……」

えへ、なんて笑顔を元就さんに向けてから、洗濯物を洗濯機に入れるために立ち上がる。
背後からとっても小さい声で聞こえてきた「…我もぞ」という言葉に、顔が赤くなっていたのは、バレてないと思いたい。


――…


「元就さんって、何が好きなんですか?」

今日の晩ご飯は元就さんの為に、彼が好きな物を作ろう。
なんとなくそう思って二人でスーパーへと向かいがてら、問いかけてみる。

史実だと魚料理やお団子、お餅が好きだって聞いたことあるけど、こっちの元就さんもやっぱりそれらが好きなんだろうか。

元就さんは少し考えるように薄く目を伏せて、「…魚、と団子」とぼそり。
あ、やっぱり史実と一緒なんだ。

「じゃあ今日は、煮魚とお団子の入ったお吸い物、にしましょうか」

あとはほうれん草のお浸しとご飯でいいかなー、と今日の晩ご飯メニューを考えながら、辿り着いたスーパーの自動ドアをくぐる。
手に取ろうとした買い物カゴは私より先に元就さんが手にしてしまって、なんだか無性に恥ずかしくなった。

魚は奮発して、小さめの鯛を二つ。
お団子は……元就さんには馴染みのない物かもしれないけど、白玉粉でいっか。鍋用の団子も売られてるけど、あれは私があんまり好きじゃないんだよなあ。あっちのが馴染みありそうだけど。
あとはほうれん草と白ネギ、生姜をカゴに入れて、その他生活に必要なものを入れていく。
途中、元就さんがおはぎをじっと見つめたまま動かなくなってしまったので、おやつにでもしましょうか、とおはぎもカゴに入れた。


こんな日常が、ずっと続けばいいのにな。

それは私のわがままだと理解しているけれど、会計をし終えた食品を買い物袋に詰めている元就さんを見ていたら、やっぱり、そう思ってしまった。


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