日本は今、梅雨、である。

ザーザーと降り続ける雨にげんなりするのは仕方のないことで、今年は例年に比べれば早く梅雨明けするというニュースを見たくらいじゃこのテンションは上がったりしない。
……にしても、私ってバカだったのかな。何で傘、忘れたりしたんだろう。
教室に残ってツナと山本の補習に付き合いながら、帰るのめんどいなーとぼやいた。

「え、光。もしかして傘忘れたの?」

きょとんと目を丸くしている天使、もといツナは、前の席に座り私の机で補習のプリントを解きながらぱっと顔を上げた。
うっかりねーと答える私に、実は俺も……と告げられ苦笑が漏れる。
同じく隣の席に座って私の机で補習のプリントを解いていた山本が、俺は持って来たぜ!と誇らしげに笑った。
ちなみに獄寺はダイナマイトの仕入れのため欠席です。

「んじゃあ二人とも俺の傘に入ればいいのな!」
「難しくない?」
「大丈夫大丈夫!俺の傘デカいから」

山本は私とツナの肩をばしばしと叩いて、笑う。
この笑顔で私の心は充分に晴れるんですけど、ついでに空気を読んで天気も晴れになってくれないだろうか。無理か。
というか、山本の傘に入るってことは送ってもらうことになるし、さすがにそこまでしてもらうのは悪い。
もう既にプリントのことなんて頭から抜け落ちてしまっているらしい二人はどうやって帰るかを話し合っていて、その手からシャーペンは転がり落ちていた。
まずプリントを解きなよと笑いながらシャーペンを渡し、ちらりと窓の向こうに目を向ける。

「お言葉に甘えて、コンビニまで傘に入れてもらおうかな」

雨脚が弱まる気配は無いし。
コンビニでビニール傘でも買えば山本に迷惑をかけることもない。
てかツナもいるとはいえ、あの山本の傘に入るなんて自殺行為としか思えない。なんかもう今更だけども。

「遠慮すんなって!家まで送るからさ」
「いーよいーよ、悪いって」
「光、最近は物騒だし、三人で帰ろ?コンビニまでなんて言わないで」
「いや……私を襲うような物好きはいないと思う」

カタンと、私が苦笑いを浮かべながら口にしたセリフに、ツナと山本の手からシャーペンが落ちた。
それとほぼ同時に、二人に顔をぐっと近付けられて、先日の獄寺とのことを思い出しておもわず赤面する。
少し身を引いて、どうしたのと冷や汗を浮かべて問いかければ、ツナも山本も、にっこりと満面の笑顔を浮かべた。あっいや、これ笑ってない笑顔だ。

「光は俺らが送って行くのな。これ決定事項だから」
「え、あの」
「最近、光ってずっと雲雀さんと帰ってたんでしょ?雲雀さんには送ってもらうのに、俺達じゃ頼りない?」
「や、そういうわけでは」
「じゃあ三人で、一緒に帰ろうね」
「な?光」

どうしよう最近なんか私、こんなんばっかな気がする。
超至近距離にある二人の笑顔に泣きそうになりながら、私に許された返答はひとつしかなかった。

「……是非、お願いします」

満足そうに笑ってからプリントに取りかかる2人が、可愛いやら怖いやら……。
黒属性大好きな元の世界の友人を思いながら、心の中ではらりと涙を流した。

 
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