今日は開校記念日で休みにも関わらず、雲雀さんに呼び出されて学校へ。
いや別に……いいんですけど……家でゆっくりしてたかったとか思ってないから……うん……。

「何ぶつぶつ言ってんの」
「今日の晩ご飯を考えていただけです」
「晩ご飯よりも書類の方を先に考えてくれる?」
「手伝ってもらってる側のくせに……」

カチカチとボールペンの芯を出したりしまったりしながら、はあとため息をついて書類にボールペンを走らせた。
ちょっとくらいの文句は言えても、結局雲雀さんには逆らえない。特に逆らおうとも思わないけど。

でも、なーんか忘れてるような気がするんだよねえ……。今日、何かあったような。
ううんと首を傾げたその直後に、窓の向こうから地響きのような、もう最近じゃ聞き慣れてしまった爆発音が聞こえてきた。
顰めっ面で視線を上げた雲雀さんに冷や汗が流れる。そうだ、確か山本のバットが出てくる回だった気がする。

「今の音、何」

ちょっと咬み殺してくるよと言わんばかりの表情でゆらりと立ち上がる雲雀さんに、慌てて私も立ち上がった。
どうどう、と変に引き攣った笑いを浮かべながら、ドアの前に立ちはだかる。

「様子なら私が見て来ますから!」
「邪魔だよ」
「雲雀さんのお手を煩わせるまでもないので!!」

今グラウンドの方に雲雀さんが行ったらきっともっとカオスなことになる!
それだけは勘弁したいから、必死だ。ね?ね!って久々に本気な私の目を見て、雲雀さんはもんのすっごく嫌そうな顔をしてから、渋々トンファーをしまってソファーに沈んだ。
お、おお……雲雀さんが言うこと聞いてくれた!

「来月の土日、全部学校に来ること」
「まさかの休日返上が条件ですか」

代償大きくね?大きすぎじゃね?
いやまあ平日も休んでばっかなんだから別にいいですけど……。

「じゃあ……ちょっとグラウンド見て来ます」
「早く終わらせてよ。……ああ、それとも君が咬み殺して来てくれる?」
「何で!?」

言いながら、当然のようにトンファーを差し出されて心底焦った。
まず私トンファーの使い方知らないし。てかツナ達を咬み殺すつもりもありませんし!
いらないしやりません!と半ば叫びながら応接室を急いで出る。
きっと戻ってきたらまた膨大な量の書類を片付けなきゃいけないんだろうなあ、と廊下を小走りで進みながら考えて、私はまたため息をついた。


――…


「……何で草抜き?慈善活動するようなキャラだったっけ」

校舎を出てすぐのところで、不機嫌っそーな顔で草を抜いてる獄寺を見つけた。
グラウンドの方に山本の姿が見えたからそっちに行こうと走り出した矢先の発見で、思わず転けそうになる。
あ゙?って不機嫌全開の顔で私を見上げた獄寺は、私とばっちり視線が合うとすぐに目を丸くした。

「んなっ……な、何で光がここに!?」
「いや雲雀さんの手伝いに……朝言わなかったっけ?」
「っ聞いてねえ!」

おや、言ったつもりだったんだけどな。
そりゃごめんと取り敢えず謝って、もう一度、何で草抜きしてんのって問いかける。

「別に、何でもねえよ」
「とりあえず……ウェットティッシュ、いる?」
「あ、ああ……もらう」
「どーぞ」

ウェットティッシュを手渡せば、獄寺は土汚れのついた手を丁寧に拭いていく。
それを眺めてから吹き終えて汚れたウェットティッシュを受け取り、二人で山本たちの方に向かった。


「なに学校で暴れてんの、君たち。雲雀さんに咬み殺してくださいって言ってるようなもんだよ?」
「「光!」」
「やっぱりおまえ、学校にいたな」

リボーンが撃った弾を、山本のバット……というか刀……で打ち返す?斬ってる?山本に、唖然としながらそれを見ているツナ。
呆れ顔をしながら話しかければ、山本もツナもぱあっと輝いた顔をこっちに向けてくれた。かわいいいい!ごちでえす!
まあツナの顔は「やっとまともな人が来てくれたー!」って感じの顔だけども。苦労してますね十代目。

「というか、やっぱりって何?リボーン」

リボーンが言ったことが引っ掛かって、野球のユニフォーム姿のリボーンに問いかければ、ぴょこんと私の方に跳んでくる。
ビックリしながらそれをキャッチして、いちいち跳んでこないでくれと心の中でつっこんだ。声には出せない、さすがに。

「お前のケータイにかけたら雲雀が出たからな」
「雲雀さん!!」

思わず応接室の方に向かって、叫んだ。

あれか、私がトイレ行った間にか!
今度からケータイは手放さないようにしよう。つーか勝手に出ないでください雲雀さん!私のプライバシー!

「だからわざわざ並中に来たんだぞ」
「ああ、へえ……お疲れさまです」
「なあ光!これ坊主にもらったんだぜっ」
「うっわ!?」

私がべしゃっと潰れそうなくらいの勢いで後ろからのしかかってきた山本に、刀の形から元に戻ったバットを見せられる。
これ望遠鏡になったり刀になったりして面白いのなーとにこにこ顔で説明してくれるのは、可愛いので大変よろしいんですけども!ちょっとかなり重いですね山本くん!

「てめえ何やってんだ野球馬鹿!光が潰れたらどーすんだ!」
「ん?わり、光。重いか?」
「少なくとも軽いとは言えない……」

だから謝る前に避けてくれと。

「あのさ、何で光は学校で……雲雀さん、と?」

山本が避けてくれた後、ツナがおずおず訊いてきた。
ええまあ尤もな疑問だけど、そこはそっとしておいて欲しかった。だってなんか山本と獄寺の目が怖いんだもの。君らそんなに雲雀さんのこと嫌いだったっけ?
どっちかというと山本は好意的だった気がするんだけどな……あれ?

「ちょっと書類の手伝いに、ね」
「……そうなんだ、お疲れ様」
「あれっ……え?ありがとう?」

ツナも目が笑ってないんだけど……。


そして結局、四人共がなかなか応接室には帰してくれなかった。
勿論、帰った先では雲雀さんが仏頂面をしていた。つらい。

 
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