「いただきます!」
「はいどうぞ」

ぱくぱくと食べ始めたみんなを眺めながら、私も箸でハンバーグを切り取って口に運ぶ。
大きめのソファーには私とツナとリボーンが座り、1人用のソファーは獄寺の定位置、心底申し訳ないが雲雀さんと山本には急遽用意した座布団に座ってもらった。ほんとすみません。

「光、ハンバーグ切ってくれ」
「リボーン……君、この前奈々さんの作ったハンバーグ切ってたよね」
「何のことだかわかんねーぞ」

このちびっ子め。

よいしょと私の膝の上にのぼってきたと思えばちゃっかり座ってしまったリボーンに頭を抱えつつ、仕方ないとリボーンのお皿を引き寄せハンバーグを切り分けた。
出来たよ、と言ったのに、何故かリボーンは返事をしない。疑問符を浮かべながら名前を呼び顔を覗き込めば、口をあーんと開けたままの顔で視線を向けられた。
……ああ、食べさせろってこと?

「君ってほんとに自由だよねえ……」
「最強のヒットマンだからな」
「ヒットマン関係ねーだろ!?」
「ほんとにね」

ひ、雲雀さんがツナに同意した……!
あまりの衝撃に感動混じりの目線を雲雀さんに向ければ、がっつりと目が合ってしまいなんとなく言葉に詰まった。そんなあたしを気にも留めず、雲雀さんはふいと目を逸らす。せつない。
そう思いながらも、私の手はリボーンの口元にハンバーグを運んでいたのだけれど。
けれどしょんぼりと眉尻を下げたのが見えたのか、再び雲雀さんの顔がこっちを向く。そうして、何かを言おうとしたのか、唇を薄く開いたところで――

「光の料理って、ほんとに美味いのなー!」

快活な声と満面の笑顔を浮かべた山本が、それを遮った。

「っえ、あ、ああ…ありがとう、山本」

ほとんど反射でお礼を言ったけれど、視界の隅では雲雀さんがすっごい顔を顰めている。山本の発言が意図してのものか無意識なのかまではわからない、わかんないけど……なんつーか、やっぱ山本すごいわ……。雲雀さんの表情にも気付いてないしな!

「うんっホントに美味しい!」
「そうだな、悪くないぞ」
「ツナもありがとう」

山本につられて笑顔を向けてくれたツナに、さっきのことは忘れた振りをして私も笑みを返した。リボーンはスルーしてやる。
だってハンバーグ切り分けてあーんまでしてあげてんのに悪くないって、いや嬉しいけど充分褒め言葉だけど、もうちょっと飴が欲しい!……いや、リボーンに飴を求めるのが間違いなのか……?あれでも私って女なんだけどな……。

「……美味しいよ、光」

はあ、と心持ち涙目でため息をついたところで、聴き慣れた低い声が耳に響いた。
しんと室内が静まる。そんなことはまったく意に介さず、すぐさま視線をハンバーグに落として、箸で切り分けたそれを綺麗に咀嚼していく雲雀さんはどこか輝いて見えた。
ひ、ひ、雲雀さんが、デレた。

「あ、りがとうございます、雲雀さん」
「別に、僕は思ったことを言っただけだ」

かと思えばツン……だがそれがいい。

ついつい緩んでしまう口元を隠しもしないで、にへらと笑って、私はサラダに箸を向けた。


――…


ガチャガチャと食器を洗いながら、スピーカーから流れる音楽を口ずさむ。

ごちそうさま!って言ってくれた彼らはみんな笑顔で、いや雲雀さんと獄寺は笑ってなかったけど一応喜んでくれたっぽくて、私なんかの料理でも笑顔になってくれる人がいるんだなあなんてすごく嬉しくなった。
食べ終えた後はお茶を片手にいろいろ話したりして。まあさすがにその頃には雲雀さんは帰ってしまったのだけど。
いろいろ話していたらあっという間に時間は過ぎちゃって、リボーンとツナと山本も8時前には家へと帰っていった。

すっごく、楽しい時間だった。

この世界に来たのだと実感できて、でも一瞬夢じゃないかと疑ってしまうほど、幸せな時間。
山本もツナも、またうちに食べにおいでと誘ってくれたし、お言葉に甘えてまたご馳走になりに行こうと思う。
そしてまた、うちでみんなとご飯が食べれたらいいなあ。

「光、リビングの片付けは終わったぜ?」
「ん?あ、ありがとー獄寺」

まあでも、いっつも獄寺と一緒にご飯を食べてるだけで、充分私は救われてんだけどね。
今ここにいる意味を、少しでも感じられるから。

 
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