なんか最近獄寺を怒らせてばっかだったような気がする、から、たまには奴の好きな食べ物でも作ってやろうと2駅遠くのでっかいスーパーに買い物に行った。
その帰り道。

「でも書かないと忘れちゃう」
「なっ、また小動物みたく……」
「何してんの?ツナ…ってあれ、その子」

なんということでしょう。フゥ太がいました。それとツナも。
天使×2とかこれなんてサービス?私の日頃の行いが良いからかな!

「光!この子はフゥ太って言って…って今はそれどころじゃなくて!」

慌てた様子のツナに、何事?と首を傾げる。
けれど疑問はすぐに解消された。

「おい、どこ行くんだ」
「こんなとこで逃がすと思うか?」

ツナとフゥ太の背後から姿を現した、ストライプスーツの3人によって。
ああ、そういえばそんな話だった気がする。
そう思いながらとりあえず両手に持ってた2つあるスーパーの袋を片手にまとめて、空いた方の手でフゥ太の腕を引っ張った。
それと同時に、死ぬ気弾がツナの頭を貫く。

「私は五十嵐光、ツナのクラスメイトだよ。あとはツナに任せれば大丈夫だから、こっちに」
「で、でもツナ兄は戦闘ランキング最下位なんだよ!?ツナ兄の適う相手じゃないよ!」
「そうは言ってもねえ……まあ、ランキングだけじゃ量れない男なんだよ、沢田綱吉って子は」

私の言葉に、きょとんとするフゥ太。
ゆっくりとツナの方を振り向いたフゥ太の目は、きらきらと瞬きながら見開かれた。
その目に映るのは、男たちを伸していく死ぬ気ツナの姿。

「ゆ…夢みたい!僕のランキングが、初めて外れたーっ!」

頬を染めて嬉しそうなフゥ太に、私もにへらと頬を緩めた。


――…


「"おい光、今すぐツナん家に来い"」
「"は?っちょ、"」

ブツッ、ツー…ツー…。

リボーンは用件だけ伝えると私の返事も聞かずに通話を切ってしまった。
もうこの流れもなんか慣れたな。


フゥ太が来てから3日。
昨日は沢田家でてんやわんやの騒ぎが起きたらしいんだけど(獄寺談)、あいにく欠席だった私はその騒ぎには参加していない。雲雀さんという先約がいたので。
フゥ太のランキング能力見たかったなー。

とにかく今は沢田家に行くことが先決か。
リボーンの言うこと聞かなかったらどうなるかなんて想像したくないから、ぱぱっと着替えてダウンを羽織ってから家を出た。
もちろんデジカメは標準装備です。
……これもなんかデジャヴだなあ。


ぴーんぽーん、と間の抜けた音の直後、ばたん!となかなかの勢いで開いた扉の向こうから、何かが私に飛びついてきた。
それが"何か"ではなく"誰か"であることに気付いて、慌てながらもその子を抱き留める。
結構重かった。それでも転けなかった私を誰か褒めてください。

「久しぶりっ光姉!」
「びっくりした、フゥ太……」

私の腰に抱きついて、うるうるきらきら可愛い上目遣いでこっちを見るフゥ太は、確かにまあ久しぶりだ。
でも私、まさかフゥ太の記憶にそこまで残ってるとは思わなかった。
名前覚えてくれてるし、まさかの姉呼びだし。きゅうんと胸が鳴る。だってフゥ太めちゃくちゃ可愛いんだもん!

「僕、あの日からずっと光姉に会えるの楽しみにしてたんだ!」
「、そうなの?」
「うん!」

天使や……!
思わずにやけた口元を手で覆う。

反対の手でフゥ太の頭を撫でながら、沢田家におじゃました。
玄関に入ったと同時に、ツナが階段を駆け下りてくる。

「フゥ太!いきなり出てくからびっくりしただろー…って、何光に抱きついてんのー!?」
「だって僕、光姉大好きだもーん」
「お邪魔します、ツナ。フゥ太ってすごい可愛いねえ」
「、光……」

なんとも言えない表情をしているツナにはてなを浮かべながら、フゥ太に手を引かれるままにツナの部屋へ向かう。
後ろからぶつぶつと何かを言いながら階段を上がってくるツナは、若干不気味だった。どうしたの君。

部屋に入ればどっかと座布団の上に座ったリボーンが迎えてくれて、今度は何用?と眉を寄せればすいっとベッドの方を指さした。
促されるままに視線を動かせば、ベッドの上には赤い、大きな本。
あれって……。

「今日はフゥ太に光のランキングをしてもらおうと思ってな」
「さいですか」
「僕、なんでもランキングするよ!」
「うん、ありがとうフゥ太」
「俺の時と態度違わないか、光」
「気のせいじゃん?リボーン」

相変わらず私から手を離そうとしないフゥ太が座ったので、その隣に私も腰を下ろす。
その斜め前辺りにツナが座って、座布団を占領していたリボーンは何故か私の膝の上に移動してきた。なぜだ。

「足痛いんだけど」
「よしフゥ太、ランキング始めていーぞ」
「無視か」

完璧無視だったな今の。
まあ、リボーンがいいならいいけどさ…逆らえないしねどうせ……。

じゃあまず何からランキングする?と私を見上げてくるフゥ太。
とは言っても、別段訊きたいこととか無いんだけど。そう考えていたら、ツナの部屋の扉がいきなりばーん!と開いた。

「ハルは光さんの好きな人ランキングが気になります!!」
「よしそれでいくぞ」
「すげぇ即決だな!つーかハル、何でまたうちに」
「光さんの気配がしたので、つい」
「おまえ怖いぞ!?」
「久しぶりーハル、相変わらず可愛いね」
「はひぃいぃ!!」

ぼふん!と顔を真っ赤にしてへなへなと床にへたり込んだハルの頭を一撫で。

その次の瞬間に、ふわっと部屋にあるものが宙に浮き始めた。
あ、あれ、もしかしてまじで私の好きな人ランキングしちゃうの!?え。まじで!
誰になるんだろう……私でもわからん。明らかなトップがいるもんだからヴァリアーとか入ってきたらわかるけど、並盛組はみんな天使だし…ううん。
てかまさかうっかりヴァリアーがランキングに反映されたりしないよね!?したら私死亡フラグなんですけど!しないでください神様お願いします!この世界ではまだ全く知らない人のはずなんです!

「光姉の好きな人ランキング……第3位は、武兄」
「まじで」
「やっ山本ー!?」
「2位は、雲雀さん」
「まじで」
「ひっ雲雀さんー!?」
「おまえら少しは反応変えろよ」

リボーンに突っ込み入れられるとは思わなかった。
つーか私、雲雀さんと山本そんな好きだったのか。2位3位て……いやもちろん確かに好きだけども。
その結果を聞いて小さく眉間にしわを寄せているツナにきょとんとしていたら、1位は……とフゥ太が口を開いた。

「ママンだね」
「!奈々さんか……間違ってはない」
「何でそこで母さんー!?」

そういえば私みんなのこと大好きだけど、別に恋愛感情じゃないもんね。
確かに奈々さんのことは大好きだ、うん。

「はひっ……じゃあハルは何番なんですか…?」
「それが…光姉の好きな人ランキング、5位より下は全部同列なんだ」
「なにそれすげえ」

私ってそんな博愛精神だったっけ。

「でもハル姉はそれでも上の方にいるよ」
「はひっ!良かったですー!!」
「おいフゥ太、その4位と5位は誰なんだ?」

リボーンの言葉を聞いて、フゥ太は少しの間黙り込む。
ちょっと経ってから、ツナを指さした。

「4位はツナ兄、5位は隼人兄さ」
「えっあ、お、俺4位?」

少し顔を赤くさせるツナ。
なんだ可愛いなあってそれを少し眺めてから、にぃっと口角をあげた。いや別に変なことは考えてないよ!
私が口を開こうとした、そのとき。
ツナが自分にしか聞こえないくらい小さな声で、ぽつりと、呟いた。

「ー…っ!?」

たまたま、近くにいたから。
聞こえてしまったその言葉に熱を持った顔を隠すことは出来なくて。

「おい光、顔赤ぇぞ」
「リボーンはちょっと黙ってて」
「……じゃあ次は光の嫌いな食べ物ランキングを作るか。フゥ太、頼んだぞ」
「わかった!」
「ってリボーン何に使うつもり?!」

ツナの顔なんて、見られるはずがなかった。
(山本と雲雀さんには負けたくないな、なんて、)

 
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