冬休みも終わってしまって、3学期が始まった。
相変わらず学校に行く日と休んでる日では休んでる日のが多い私だけど、雲雀さん権限で一応許されているらしい。持つべきものは風紀委員長な友達ですね!
まあその代わり最近はずっと雲雀さんのおやつ係、全部私なんですけど。お茶汲み係も私なんですけど。
なんかその内、勝手に風紀委員入りされそうで怖いわ。

そんなことを考えてながら、コンビニで買った大量のお菓子をぶら下げて、家へと歩いていく。
いやあ雲雀さんとばっかお茶してたから家にあるお菓子がなくなってたことをすっかり忘れてたんだよね。
にしても買いすぎたか……うむむ。

「――…やっぱ俺、1人が向いてんのかな」
「、?」

公園を横切ったときに、聞こえた声。
聞き慣れたその声に公園内を覗き込めば、ブランコに座って煙草の煙をくゆらせている獄寺の姿。
珍しく落ち込んでる風の獄寺に、気付いたら足がブランコの方に向かっていた。

「獄寺、何してんの」
「っ!光……」

びくりと顔を上げた獄寺の表情は、辛そう…というか、なんというか。
見ているこっちが、切なくなりそうな、そんな表情で。

「何でも、ねえよ」

私から顔を背ける、獄寺。
だろうとは思ったけど、思った通りの反応だなあ。

ちょっぴり苦笑して、コンビニの袋を地面に置いてから私もブランコに腰をおろした。

「何でもない人は、そんな顔しないよ」
「……、」
「言いたくないならいいけどさ。話したらスッキリすることもあるから」

獄寺の方は見ずに、ブランコをゆるく漕いで空を見上げながら。
私の言葉から数秒か数分が経って、そして獄寺が、口を開いた。

城を出てからのこと。
ツナについて行くと決めたこと。
でも、上手くいかなくて、空回りばっかして、ツナも守れなくて。
ツナは自分じゃなくて山本を頼りにしてんじゃないか、って。

悲痛な表情でぽつぽつと言葉を紡いでいく獄寺に、目を細めた。
本当に、まっすぐな子だなあ。見たこともないくらい、ツナに……自分の大切な人に対して、真っ直ぐな人だ。

「だから、俺…は、1人の方が……向いてんじゃ、ねえかって」
「そんなわけ、ないよ」

それまでずっと黙って聞いていたけど、そこでやっと私は口を挟んだ。
少し目を見開いた獄寺の視線を感じるけど、獄寺には視線を向けずに、空を見上げたまま、しゃべり続ける。

「まだ中学生かそこらの子が、空回って上手く出来ないのは当然のことだし。獄寺はいっつもツナに対して真剣に考えてて、真っ直ぐで、そんなこと普通みんなできないよ。だから私は、獄寺をすごいなって思う」
「……光、」
「ボンゴレとか、ボスとか右腕とか、ツナはまだよくわからないから、獄寺が右腕であることを強く意識している理由がわかんない。ツナにとって獄寺は、右腕じゃなくて、友達だから」

獄寺は、黙ったまま。

「ツナは山本も獄寺も同じくらい大切な存在に思ってるよ。友達にどっちが上とか、無い」
「で、も」
「ねえ獄寺、ツナがどう思ってるかを考えるのも、大事だと思うけどさ」

とんっ、とブランコから飛び降りて、座ったままの獄寺に、振り返った。

「獄寺がやりたいようにする方が、大切だと思うよ。……まあ君の場合は、周りを見なさすぎる点もあるけどね」
「っるせぇ、よ」

顔を上げた獄寺と、私の視線が重なった。
へらりと笑みを浮かべたと同時に、紫煙が空に溶けていく。

「私は月並みなことしか言えないけど」

獄寺や、みんなを想ってる強さは、誰にも負けないから。

「獄寺はいなくちゃいけない存在だよ。みんなにとっても、私にとっても」
「……っ」
「だから1人の方が向いてんのかなーとか言われると、私が嫌なんだよねえ」
「、悪ぃ……」

謝ることでもないけど。
そう言って笑えば、獄寺の顔にも、小さく笑顔が浮かんだ。それを見て、安心。

「隼人はいい右腕になるよ、絶対」

ぽつりと呟いた私の言葉に獄寺が反応するより早く、地面に置いていたコンビニの袋を拾い上げてぱんぱんと砂を払ってから、獄寺の膝の上に強制的に乗っけた。

「ツナん家に戻るんでしょ?差し入れにあげる」
「でもこれ、おまえのじゃ…」
「別にいいよーまた買うし」
「……さんきゅ」
「ん!じゃあ今日の晩ご飯はハンバーグだから、あんまり遅くならないでねー」
「またハンバーグかよ」
「またって程じゃないし、私が好きなんだからいいじゃん」
「週1くらいで食ってんだろ」

その後も少し言い合って、そこで公園の向こうに奈々さんの姿が見えたから、私はあわてて獄寺に背を向けた。

「じゃあ、帰るから。あんまりツナに迷惑かけないこと!」
「光に言われるまでもねーよ!」

言われるまでもあるから言ってんだよ。
思ったけど軽く笑う程度にして、奈々さんが来る前に出ようと歩き始めた、一瞬の間の後。
腕を引かれて、身体が後ろに傾いた。

「わっ、!?」

ぐしゃ、ってお菓子の入ったコンビニ袋が落ちる音、と。ぽす、と私の身体が、温かいもの……獄寺、にぶつかって、包まれる音。
後ろから首に回された腕と、超至近距離な獄寺の顔に、身体が固まった。

「……ありがとな、光」
「え、あ、うん」

「おまえで、良かった」

耳元でしゃべられるとくすぐったいんですけど……。

恥ずかしさが異常なことになっていたら、パッと獄寺の腕が離れた。
あまりの恥ずかしさに後ろも振り向けずに、全速力で公園を出る。

なに、なになになに!?
今何が起きたのか誰か教えてええ!イタリア男こえええ!!

 
back
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -