「"おい光、今すぐ並盛川の河原に来い"」
「"は?っちょ、"」
ブツッ、ツー…ツー…。
リボーンは用件だけ伝えると私の返事も聞かずに通話を切ってしまった。
あれっ、なんかデジャヴ。
元旦の「獄寺が実は可愛かった事件(私命名)」以降、妙に獄寺が好きすぎていけない。
前の世界にいるときは獄寺のこと別にそんなに好きじゃ……ってか普通だったんだけど。
そうか、獄寺って可愛かったんだ。
てなわけで獄寺も山本やツナと同じラインに上ってきました。今まで説教ばっかしててごめんね!でもやっぱ問題起こしたら叱るね!
と、まあそれは置いといて。
リボーンの言うこと聞かなかったらどうなるかなんて想像したくないから、この前買ったばかりのコートを羽織って家を出た。
もちろんデジカメは標準装備です。
――…
河原にいたのは、久しぶりなディーノさんを筆頭にキャバッローネファミリーの面々と、ボンゴレファミリー+α。
お殿様コスのリボーンを見て、ああ原作の日かあと頭を抱えた。
なんか理由つけて断れば良かったと、そこまで考えたとこで気がついた。
リボーン、私の返事聞かずに電話切ったんだった。
「お、来たな光。おせーぞ」
「……リボーンだもんな…仕方ない仕方ない、うん。あけましておめでとうリボーン、みんなも」
「んなっ光ー!?何でここに!」
びっくり顔のツナに、事の次第を話せばごめんと謝られる。だから君が謝ることじゃないってのに。
久々にツナたちに会えて嬉しいよと笑えば、ツナもやっと笑ってくれた。
うん、天使には笑顔のが似合うね!
「はひっ、光さんですー!」
「え?わあっ、光ちゃん!」
「「あけましておめでとうございますっ!」」
「わ、ハルに京子ちゃん。2人とも着物似合ってるね!可愛い」
「かかかかわいいだなんて!ハル、照れちゃいますうう」
「えへへっそうかな、光ちゃんにそう言ってもらえると嬉しい!」
にこにこと嬉しそうな2人の写真を撮らせてもらっていたら、ぴょいんとお殿様もといリボーンが、私の肩に乗ってきた。
「光は今日、写真係だぞ!」
「まじで」
「この前の新聞見たからな。ボンゴレ専属のカメラマンに認定だ」
「マフィアにカメラマンとかいるのーっ!?」
ツナの発言に、もっともだと頷いてしまった。
まあリボーンのことだから、いるいらないは問題じゃないんだろう、うん。
だけどリボーンの話す限り、私は今回、バトルには参加しなくていいらしいのでそこはラッキーである。
リボーン特製、「ボンゴレ専属カメラマン・五十嵐光」と書かれた名札を首からぶら下げて、ボンゴレ式ファミリー対抗正月合戦を始めた彼らに、カメラを向けた。
おみくじが全部凶と大凶で落ち込む了平さん。
羽根突きでホームランを出しちゃった山本。
甘酒を用意してくれた京子ちゃん。
足が痺れる直前のハル。
福笑いのやり方が違うランボ。
飛んでっちゃいそうなイーピン。
ファミリーの仲間を褒められない獄寺。
お殿様なリボーン。
余裕ぶっこいてたら点数チャラにされちゃったディーノさん。
他にもいっぱい、キラキラしてる、みんなを。
「、眩しいなー……」
デジカメを下ろして、楽しそうに騒いでいるみんなを一歩遠くから眺めながら、ふうと一息ついた。
目を細めて、遠くから眺めてないと、目が眩んでしまいそうなほど。
そうやって、ぼんやりとしていたら。
「いったっ!?」
「ボーッとしてんじゃねぇ、光」
リボーンに蹴り入れられた。
えっ、いやまさか蹴られるなんて思ってなかった。から、すんごいびびった。しかもこれめっちゃ痛え!
「何すんの!?」
「光がぼけーっとしてんのが悪いんだぞ」
「えええ……んなばかな」
うっかり落としかけたデジカメが無事であることを確認して、お殿様なリボーンをジト目で見つめる。
そんな私の視線を気にも留めないリボーンは、ちょいちょいと手を動かして私にしゃがむよう促した。
眉を寄せながらも、大人しく膝を折る。するとリボーンは私の手かデジカメを奪い取って、ぴっぴっと操作しだした。
何してんだろう。じいと眺めていたら、少しして、リボーンは顔をあげた。
「光、」
数秒の間をあけて。
私の手の中にデジカメを戻したリボーンに、ぺしっと膝を叩かれる。
「おまえも、あいつらの仲間だってことを忘れんなよ」
「……は、」
それだけを呟いて、リボーンはアンコロもちの判定のために、みんなの元へと戻っていった。
ぽかんとしたまま、その言葉をうまく飲み込めずに、とりあえずカメラを構える。
ビアンキから逃げるツナとディーノさん、それを追いかけるビアンキ、眠ったリボーンに、笑ってる京子ちゃんとハル、倒れた獄寺と心配する山本。
それらを全部カメラに収めて、自分の目で、その景色を眺めた。
「ちょっ、あ、光ー!助けてぇぇえ!」
「あら光、光が食べてくれるの?」
「え!?いやいやごめん無理ツナこっち来ないでー!」
「えぇえー!?」
いつの間にか自分もその景色に融けていたことなんて、今の私には気が付かない。
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