1人用のソファーに座って、黙々と朝ご飯を食べている獄寺。
その斜め前で2〜3人は余裕で座れそうな大きいソファーに寝転がりながら、既にご飯を食べ終えた私は面白い記事でもないかと新聞を眺めていた。

「おい光、みそ汁おかわり」
「自分で行ってください」

私の返事に、少しの間を開けてから獄寺はチッと舌打ちをして台所へと向かっていった。ご飯は提供してるけど、私は君の家政婦じゃないんです。

特に面白い記事もなく、読むのやーめたって新聞を閉じようとしたとき。ふと、1枚の写真が目に入った。

「……んん?」

そこには他にも数枚の写真が載っている。
けれど一際大きく載せられた写真には、見覚えがあった。
映っている、並中と思わしきグラウンドにそこで練習に励む野球部たち。

……こんな写真、撮ったことがあるような気がするなあ。

写真から目を離して、その下に書かれていた文字に視線を移す。
そしてそれを読んで、犯人の見当がついた私は、ソファーに新聞を叩き付けて立ち上がった。

焼き鮭を口に突っ込んだままの獄寺が、ぽかんとした表情で私を見上げてくる。

「ちょっと並中行ってくる!」
「は!?何でだよ!」
「野暮用!!」

片付けよろしくね!と叫んでさっさとスニーカーに履き替えた私は、かなりの勢いで階段を駆け下りて、自転車に跨り並中へと急いだ。


「……どうしたんだ、光のやつ」

呆然と見送るしかなかった獄寺が、ふと目についたさっきまで光が見ていた新聞に手を伸ばす。
最後から4枚目の記事に見つけた見出しと、大きく載せられた写真、そしてその写真のタイトルを見た獄寺の手からかたんと箸が滑り落ちた。


並盛町冬の写真展覧会

最優秀賞・五十嵐光
題・群れ



――…


自転車を校舎の前に放置して、下駄箱でスニーカーからスリッパに履き替えて、階段を2段飛ばしで駆け上る。
応接室の扉をッバン!!と勢いよく開ければ、珍しく少し驚いたような顔をした雲雀さんと、ばっちり目が合った。

「何してんの、君」
「何してんのじゃないですよ雲雀さん!」

雲雀さんも見ていたのだろうか、応接室のテーブルにも乗っている新聞を手にして、さっき私が見ていた記事を雲雀さんの前に叩き付けた。

「これっ!私こんなの出した覚えないです!!」
「ああ、そのこと?当然だよ、僕が出したんだからね」
「しかもタイトルが群れって!もうちょっとマシなの付けましょうよ!」
「群れとしか付けようがないじゃない。……シマウマの群れの方が良かった?」
「雲雀さんにそういうの言われると反応に困りますね!?」

さも当然のように宣う雲雀さんに、なんかもう怒鳴ってる自分が馬鹿らしく思えてきた。あとちょっと混乱した。

腹の底からため息をつけば、雲雀さんがちらりと睨んでくる。
睨みたいのはこっちですちくしょう。

「どうぞ光さん、委員長」
「あっ草壁さん……どうもすみません、ありがとうございます」
「いえ、ああ光さん見ましたよ新聞、最優秀賞おめでとうございます」
「、いえ……」

お茶を持ってきてくれた草壁さんの言葉に、プラスアルファで脱力。

いや、賞をもらえたのは確かに嬉しいけどね?
雲雀さんもせめて私に何か一言くれるとかさあ…してくれてもいいのに……。
まあ一言くれたとしたら絶対こんなの出さないけどね!恥ずかしいし!

「つーか雲雀さん、この写真どうやって」
「君この前デジカメここに忘れて帰ったでしょ?その時にパソコンにデータをコピーしといた」
「ああ……そうですか」

つまり私のミスか。

「いいじゃない、別に。何で怒るのかわかんないんだけど」

軽くむくれたように呟きながら、お茶を飲む雲雀さん。
いや、誰だって勝手に自分の写真出されたら怒ると思うんですが。

「僕は君の描く絵も好きだけど、撮る写真も好きなんだ。それを理解しない奴らがいるなんて嫌だから、それなら認めさせてやろうと思ったの」
「……は、」
「僕が全部見て、一番君らしさのある写真を選んだんだ。何か文句ある?」

むっすー、って。
いや、え、雲雀さん?この人雲雀さんだよね?偽物とかでなくて?
一気に熱くなった顔を隠すように左腕を上げて、小さく咳き込む。

雲雀さんも、天然タラシ組か……っ!

「う……文句ない、です」
「わかればいいんだよ」

写真、については、あまり褒められたことないし、こんな賞をもらったのも初めてだから、嬉しくないわけがない。
それを褒めてくれたのが雲雀さんなら、尚更。

「……ありが、とう…ございます」

ぼそぼそと呟けば、雲雀さんはふわりと、優しく笑った。

 
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